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袖引かれ誰しの人や薔薇の棘
『一寸』26号、例によって、いずれも興味深い。大谷芳久氏による藤牧版画ねつ造指摘は刺激的だ。美術品にはつねに贋作問題がついてまわるから、やっかいなのである。ある知人の美術商は、どんなものでもまず疑ってかかる、と言っていたが、真贋については慎重すぎるということはない。
『彷書月刊』6月号。絵葉書人物誌。絵葉書作者の列伝は参考になる。なお、44ページの書肆アクセスさんの広告で「林哲夫が選ぶ書肆アクセスの40冊」フェアー開催期間が6月12日から7月8日までとなっているのは、誤り。6月6日から24日が正しいのでお間違いなきよう。もちろん『文字力100』も並ぶ。これは4〜6日のUBC書肆アクセス・ブースが初売りになる予定。 ウンチクの知人達から来たDMを二枚紹介する。 大倉宏さんが運営している新潟の砂丘館で「手作り雑誌の小宇宙吉田千秋の「SHONEN」と「AKEBONO」」という展覧会。吉田千秋は明治二十八年に大鹿に生まれて大正八年に没した薄命の才人である。「琵琶湖周航の歌」の原曲を作曲したことが1993年に明らかになり没後74年にして脚光を浴びたとのこと。手作り雑誌が立原道造や滝口修造を連想させる。 六本木のギャラリー柳井で「土岐千尋 盒」展。黒田辰秋に師事したという木工作品。オシャレ。 他には、そうそう、「アレエ(『ARE』アーです)の洲之内徹特集がありませんか?」という電話があった。残念ながら保存用しかないので、コピー代実費で送らせてもらうことにして、宛先を尋ねると、なんと、S社の出版企画部だった。洲之内の資料を集めているふうだったから、何か出版の予定があるのかもしれない。S社でねえ。 ミニレモンの花満開なり。幼虫は急に姿が見えなくなった。ひょっとして鳥のスナックになってしまったか…… ![]() #
by sumus_co
| 2006-05-25 20:23
| 古書日録
檸檬花の開きて鬼の棲む雑誌
『文字力100』の再校と表紙の色校訂正が届く。色はずっと好くなったのでオーケーとする。ここに書影を出したいのはやまやまなれど、UBCから戻るまで、少々お待ちいただきたい。ナベツマがひとこと、こう言った。
「モンドリアンみたい」 『季刊文科』34号(鳥影社)が届く。ウンチクの連載「ふるほん月下屋上帖」第一回が掲載されている。作品社版『梶井基次郎小説全集』を紹介した。この雑誌は編集長が大河内昭爾氏で、編集委員が、秋山駿、勝又浩、松本徹、松本道介、吉村昭。いかにも文学雑誌らしい文学雑誌である。そのせいか、寄稿者のなかでウンチクは、玄月氏、菊地幸見さんに次ぐ年少者(!)。巻頭の編集長インタビュー、今回は尾崎一雄と尾崎士郎の娘さんたち、お二人とも一枝さんである(旧姓=尾崎一枝)。 ![]() web読書手帖に「とにかく長い書名ってあるもんだ」として平田オリザ 『十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本』 (晩聲社刊)が取り上げられていた。ほう、たしかに長いが、すぐに思い出した例は、渡辺一夫訳の『パンタグリュエル占筮』(高桐書院、一九四七年)だ。解説によれば、この本の原題は以下の通り。 『生まれながら粗忽にして浮薄なる人々を裨益し教へ諭さむが為にパンタグリュエル王が莚司アルコフバス師の新編にかかる確実真正にして無謬なるパンタグリュエル永代占筮』 Pantagrueline Prognostication, certaine, veritable & infaillible pour l'an perpetuel. Nouvellement composée au prouffit & advisement de gens estourdis & musars de nature, Par maistre Alcofribas, architriclin dudict Pantagruel. ![]() こういうものはネットで検索してみるに限る。エクスナレッジから二〇〇一年に出ている高田七穂の本はこんなに長い。はっきり言って、これはタイトルというより惹句である。 『成功・失敗実例満載。購入した人にも納得の一冊 失敗・成功の事例を中心に、これほど詳しいマンション本はない。法律の落とし穴、質問の方法など1から10まで詳細に手ほどき。住んでから財産価値をあげるために読んでも役立つ。』 そして世界一となるとさらに長い。 『The Life and strange surprising Adventures of Robinson Crusoe, of York, mariner, who Lived Eight-and-twenty years all alone in an uninhabited Isiand on the Coast of America, near the mouth of the great River Oroonque, having been cast on shore by shipwreck, where-in all the men perished but himself. With an Account how he was at last strangely delivered by Pirates, Written by Himself.』 『ロビンソンクルーソー漂流記』である。ついでにひっかかった楽曲の世界一長いタイトルはフィオナ・アップルの When The Pawn Hits The Conflicts He Thinks Like A King What He Knows Throws The Blows When He Goes To The Fight And He'll Win The Whole Thing 'Fore He Enters The Ring There's No Body To Batter When Your Mind Is Your Might So When You Go Solo, You Hold Your Own Hand And Remember That Depth Is The Greatest Of Heights And If You Know Where You Stand, Then You Know Where To Land And If You Fall It Won't Matter, Cuz You'll Know That You're Right. である。長! ……でも邦題は「真実」、短! #
by sumus_co
| 2006-05-24 17:51
| 渡邊一夫の本
片すより読みふけりをり汗埃
『文字力100』初校が終わったので、資料を片付ける。多少分類も変えてみる。段ボール箱も新しくして、テーマごとに分別。ラベルを貼る。一日中そんなことであっという間にすぎる。
途中、宅急便で『文字力100』の表紙の色校正が届く。データ入稿(CD-R)なのでめちゃ早い。しかし、聞くところによると、印刷所が新しい機械を導入したらしく、どうも色の出がデータとシンクロしていない。かなり赤が強く出ているのだ。訂正のメールを送る。 午後の休息時に録画の「クリムゾン・リバ−2」の残りを観てしまう。ジャン・レノが初の続編出演だそうだが、それはともかく、アート系ではあるものの、ちょっとばかりこけおどしっぽい画面になっている。ただ、小物が凝っていた。修道院の古い革装の本も本当の古書を集めた雰囲気はとても好かった。 映画鑑賞の後は、また、黙々と片付ける。大学時代、東京で暮らすようになって「片す」という言葉を初めて聞いた。へんな言葉だと思った。『言海』にはこうある。 《かた・す ス・セ・サ・シ・セ (他動)(規・一)移ス。處ヲ替フ。》 『新明解国語辞典』第四版(三省堂、一九九二年)にはこうある。②はアクセントの種類。 《かた・す②:②【片す】(他五)〔東北・関東方言〕かたづける。しまう。》 かなり意味が違うが、まあ、それはどうでもいい。そうやって片していると、『暮しの手帖』53号(一九六〇年二月)が出て来た。パラパラ開いていたら、「自転車の上の本屋」という記事が目についた。池袋の久保書店をクローズアップしている。 やもめ暮しの久保氏は「仕切り場」で雑誌などを買い集めて、古書業者の市(第8支部とある)へ出す。「仕切り場」をしんかいさんで引いてみると、「仕切り屋」として《廃品回収業者が集めて来た廃品を、それぞれに仕分けして売り払う・職業(人)》という説明がある。立て場(建て場)《くず屋がその日集めた品物を買い取ってやる問屋》に似ているが、紙以外のものも扱うのが仕切り屋ということか。 久保氏の息子さん武君が十七歳で神田の波木井書店の店員として住み込んでいる。「日本の古本屋」で調べてみると、練馬区石神井町に久保書店が現存し、店主は久保武となっているので、この記事に写っている青年にちがいない。 長屋に住んで、その敷金が3万円、家賃1200円。先日も紙くずのなかから学会雑誌の揃いを見つけて《おもい切って2百50円で買って、市へ出したら、たちまち3千5百円で売れた》そうである。多少、お泪頂戴の気味がなくはないが、当時の古本屋のひとつの姿を記録したいいレポートだ。 #
by sumus_co
| 2006-05-23 17:33
| 古書日録
ひねもすを刷り綴じ裁ちの汗ふかず
ひさしぶりにP-BOOKを製造する。書肆アクセスさんの注文あり。刷って、折って、綴じて、裁断して、題箋を貼り(またはタイトルを手書きし)、袋詰め。四種四十冊。まる一日仕事だった。
きのう、みはる書房の目録届く。神保町一ノ二〇にあるらしい。目録しか知らないが、なかなかどうしていつも思わず見入ってしまう。ただしほとんど注文したことはない。橋本邦助『巴里絵日記』が6500円、この本は欲しいと思ってはいるのだが……。作品社の『文芸豆年鑑1938年版』が7800円、もし架蔵していなかったなら、これは悩ましい値段である。長田恒雄の詩集など三冊にも目がとまった。長田は三省堂書店のPR雑誌『エコー』の編集長だった。 今日は、とらや書房の目録28号。これは布上芳介の『墓』(作品社、一九三五年)をネットから買ったため、自動的に送られて来た。そう言えば、今月の『日本古書通信』922号に目録とネット販売の兼ね合いというテーマで古書店主たちが寄稿しているなかに、とらや書店主中川英治氏の名前があった。店舗は水戸駅前だそうだ。 《私が目録販売を始めたのは30年前、ネット販売は「日本の古本屋」が誕生してすぐに入会させて頂いたので約10年になります。/この二つが無ければすでに閉店していたと思います》 『早稲田古本村通信』104号配信される。松本翁は野田書房について書いている。昭和十三年の《5月1日、野田誠三は常磐線の車中で服毒自殺をはかり、上野駅で帰らぬ人となった。神楽坂の芸妓に失恋したのが原因といわれ、あと10日ばかりで、彼は27歳の誕生日を迎えるところであった。》とあるが、失恋というか、身請けして結婚したが、女性の方が出版の邪魔にならないように身を引いた、というようなことだったらしい。この点については拙著『文字力100』に村上菊一郎の文章から引用したので、参照のこと。 荻原魚雷氏の連載「男のまんが道」、今回は名前の話、面白く読んだ。《『AKIRA』の主人公の金田は、もちろん『鉄人28号』の主人公の金田正太郎。アキラは「28号」とも呼ばれている》というすずき寿ひさ説を紹介しているが、なるほど(!)である。 #
by sumus_co
| 2006-05-22 21:11
| 古書日録
下巻得ていつまみえるか夏は來ぬ
荷物を発送するためにクロネコの事務所まで出かけた。ついでに古本市場をのぞく。佐藤愛子『血脈』(文藝春秋、二〇〇一年、七刷)上巻を105円で。TVドラマがけっこう面白かった。下巻は見当たらなかった。
帰宅してアゲハの幼虫の様子を見る。日光浴をしていたのでデジカメで撮ってみた。檸檬にカメラを向けていると、ちょうど黒アゲハが優雅に飛んできた。おお、シャッターチャンスとばかり、身構えたが、デジカメはこれが泣き所、ひらり、ひらり、と移動するので、どうしてもうまく写らなかった。 中央に日光浴中の一匹、右と上にも、合計三匹確認。 ![]() Mさんより古書メール。文化博物館でろうじの古本市ですか。 《今年の文化博物館は一階のフロアーをゆったり使った展示で、ゆっくり本を見ることが出来ました。ただし、手の出せない本が並んで眼福に与るのみ。雑誌「書窓」を手にとってウットリ。細川書店の『荷風句集』秩入りにもはじめてお目にかかりました。山崎書店の棚で箱の痛んだ『猫と庄三と二人のをんな』創元社昭和21年再版を開くと著者献呈落款入りでした。千円なので購入。 それから久し振りに文庫堂。店頭の箱から宇野浩二全集を2冊各500円、中で『白秋小唄集』アルス大正12年32版函を1500円。文庫サイズのかわいい本。紫陽書院に寄って文庫を1冊。バスで市役所前まで戻ってサヴォイで休憩。最後はアスタルテ書房。吉井勇を1冊。 今日は散財してしまいました。それにしても脈絡のない本の買い方で呆れてしまいます。 『文字力100』予約いたします。出来ましたら署名入りを。》 よろこんで、6月7日以降の発送になります、しばしお待ち下さい。予約受付中! #
by sumus_co
| 2006-05-21 21:19
| 写真日乗
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