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第6回「小さな古本市」メリーゴーランド京都お元気ですか? メリーゴーランド京都は、この秋で6周年を迎えます。そして、毎年ご好評をいただいている「小さな古本市」を今年もまた開催したいとおもいます。絵本・読みもの・画集・詩集など、とっておきの本が、贅沢にも二日間だけメリーゴーランド京都に集まります。誰かが読んだ一冊の本を、別の誰かがあたらしい気持ちで、また懐かしい気持ちで、手に取る・・・。古本を見ていると、本の不思議な運命のようなものを想わずにはいられません。今年もどうぞよろしくお願いいたします。 ○開催日 2013年 10月13日(日)10:00~19:00 10月14日(月・祝)10:00~17:00 ○会場 寿ビル5F ギャラリーギャラリー(メリーゴーランド同フロア) 〒600-8018 京都市下京区河原町通四条下ル市之町251-2 寿ビル5F 電話 075-352-5408 オコリオヤジ改め「ぺるデュ書店」として出店します。先日の『季刊湯川』を五冊揃えるために余分に購入した数冊など、今回は渋めを出すつもりです。 #
by sumus_co
| 2013-10-10 21:42
| もよおしいろいろ
ママの遺したラヴソング「ママの遺したラヴソング A Love Song for Bobby Long」(シェイニー・ゲイベル監督、二〇〇四年)。スカーレット・ヨハンソン(ジョハンソン)主演。母親を知らずに祖母に育てられた娘。母の死を知らされ母が住んでいたニューオリンズへやってくると、母の家にはむさくるしい男二人が住んでいた。 画家のフェルメールを描いた作品「真珠の耳飾りの少女」(二〇〇三)でスカーレットの顔を覚えた。ヨハンソンという名前の通り父方がデンマーク系。母方がユダヤ系とのこと。そしてその後で見た「モンタナの風に抱かれて」(一九九八)にチャーミングな子役として出ていたのに吃驚し、「私がクマにキレた理由」(二〇〇七)でベビーシッターを演じていたのも彼女だったのだと改めて知ったしだい。 上の写真は母親の遺したトランク。本はこれだけ。娘は売り払うといいながら、駅の待合室でそのなかの一冊を読んでしまう。 そのタイトルはカーソン・マッカラーズの『心は孤独な狩人 The Heart is a Lonely Hunter』(一九四〇年、河野一郎訳の新潮文庫は一九七二年刊)。一九四〇年の大ヒット小説。グレアム・グリーンはフォークナーよりマッカラーズが好きだと公言しているそうだ。彼女は第二次大戦後ずっとパリに住んでいた。 母に誰かから捧げられたこのペーパーバックを読んで娘パースレーン(ヨハンソン)は男たちの家に戻って同居することを決意。奇妙な生活が始まる。 初老の男ボビー(ジョン・トラボルタ)は元ハーバードの英文学教授、いわくあって南部へ落ちて来た。いっしょについて来た教え子のローソン (ガブリエル・マクト)に小説を書かせようとしているが、どうもはかばかしくない。ところがローソンはパースレーンがやって来てから少しずつ変り始める。 トラボルタは器用にこなしているもののどうも適役とは思えない。ヨハンソンも悪くはないが、なんとなく役柄とは似合わないような気がする。ブルーズ演奏もやや取って付けたような感じ。結末もほぼ最初から見えている。ヨハンソンを鑑賞する映画というところ。 登場する本の姿はなかなかいい。 #
by sumus_co
| 2013-10-09 20:09
| ほんのシネマ
夢の口宇佐見英治『夢の口』(湯川書房、一九八〇年四月一五日)。湯川書房の在庫を預かっておられた方より段ボール一箱まとめて頂戴した。ギャラリー島田に送られて来た。個展会場に来られた方でご希望の方に頒けてください、ということである。有り難い。小生が画廊にいる時に声をかけてくだされば呈上します。 これも洲之内徹と宇佐見英治がどちらがどうかという問答から飛び出た駒のようなものである。『季刊湯川』連載の四篇はここにまず収録された。他には「コスモスの顔」「樹と岩」「死者の書」(『同時代』)、「多生の旅 一、二」(『世界』)、「夢の口」(『白井晟一研究』)。 やはりどう読んでも洲之内徹の上を行くとはどうしても思えない。ただし初めて読んだときよりも宇佐見の文章や考え方に馴れてきた。二者を単純に比較しても始まらないと納得できるようになった。ただ例えば「多生の旅」のこんな表現にはどう反応していいか分らないというのが正直なところ。 《美は存在の裂傷である。本郷隆ほどその痛みを肌身に感じていた人はない。私はいまこれらの言葉を書き抄(うつ)しながら「光は悲劇だ」といったルオーの言葉を思い出す。》 納得するのは引用されているジャコメッティが生涯の最後に吐いたという言葉。 《そんなものはみな大したことでない。 絵画も、彫刻も、デッサンも、 文章、はたまた文学も、そんなものはみな それぞれ意味があっても それ以上のものでない。 試みること、それが一切だ。 おお、何たる不思議のわざか。》 「おお、何たる不思議のわざか」は余計のように思うが、とにかく「そんなものはみな大したことでない」。 本の造りはノドの開きもいいし、活字や組版、表紙の布の手触りもいい。ただひとつ、函が窮屈で本体を引き出すのに一苦労する。グラシン紙が破れてしまう。函入りの本にはたまさかにあることながら、これはとくにキツい。どうしたことか。惜しい。 #
by sumus_co
| 2013-10-08 21:28
| 古書日録
パリ絵葉書セット第2集
個展に合わせて絵葉書セットを制作しました。6枚セット500円で個展会場で販売いたします。通販は下記よりお申し込みください。
Ekaki-tsuma Junk 「絵葉書セットでパリ気分を〜」 http://nabequest.exblog.jp/20499139/ 切手面はこんな感じです。 #
by sumus_co
| 2013-10-08 20:56
| 画家・林哲夫
胞子文学名作選田中美穂編『胞子文学名作選』(港の人、二〇一三年九月二三日、ブックデザイン=吉岡秀典)。本の装幀などをやっていると、必ずこういう本を作ってみたくなるときがある。しかしたいていは予算や著者の反応などを慮って結局はそこそこ大人しい仕上がりでまとめてしまう。そういう意味からすれば、この造本は相当に気張った仕上がりである。それは間違いない。ただそれが成功しているのかどうか、意見が分かれるかもしれない。意見が分かれるのはいい仕事だとも言えなくはない。 レイアウトは凝り過ぎている。対して、内容は安易といえば安易である。アンソロジーなどというものは所詮安易な企画だ。しかし、そこに腕の見せ所がある。何をどう選ぶかに全てがかかっているわけだ。その点では蟲文庫・田中美穂さんが選んだ胞子文学アンソロジーはさすが苔好き古書店主と思わせるものがある。 やはり唸ったのは「幽閉」だ。井伏鱒二「山椒魚」のプロトタイプ。同人雑誌『世紀』に掲載されたこの作品を読んだ中学生の太宰治はこの人に師事すると決めた。田中さんの解説によれば、 《井伏鱒二の生家近くに、訪れる人のあまり多くはないひっそりとした渓谷があります。》《ここを訪れると、かならず思い出すのがこの「幽閉」。名作としてひろく知られる「山椒魚」の原形となった井伏鱒二の処女作で、学生時代、郷里への帰省中に書かれたといわれています。山椒魚が出るに出られなくなった岩屋のそのわずかな隙間の外にひろがる景色は、おそらくこの場所がモデルではないかと思うのです。 作中にある「岩屋の天井にぎっしりとくっついている、杉苔とぜに苔」という光景は、実際にはありえません。苔は光合成が必要な植物なので、日の光のとどかない環境で生活してゆくことはできないのです。でも、その苔についての描写はとても細やか。ここでは「苔の実」と書かれている胞子体の柄が静かに伸び、やがて「花粉」(胞子)を散らしてゆく、ひそやかでドラマチックなさまは、当の山椒魚の憂鬱を横目に、ついうっとりと繰り返し読んでしまいます。》 ということである。井伏はスタート時点から大嘘つきだった。見事な嘘つきだ。一方、井伏を天才だと見て取った太宰からは「魚服記」が選ばれている。つげ義春の「紅い花」を連想させる(むろん逆なのですが)短篇である。これがまた欄外註記のように小文字で組まれていてはなはだ読み難く心憎い。 千変万化の版面からしてどの作品が読みやすいというわけでもないが、《古今比類ない胞子文学》の金字塔、尾崎翠「第七官界彷徨」はふつうに読めるように配慮されている。これは有り難かった。「第七官界彷徨」を読もうとずっと思いながら、どうしてもその気になれず逃していたので、こんな瑞々しい少女マンガのような作品だったとはびっくり。初出は昭和六年。なんとも摩訶不思議な時代だったようだ。 アンソロジーでなければ出会わない作品もある、ということである。 港の人 『胞子文学名作選』 http://www.minatonohito.jp/products/141_01.html #
by sumus_co
| 2013-10-07 17:43
| おすすめ本棚
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