ピエール・エルメ(Pierre Hermé)というチョコレート店でマカロンを買う妻に付き合った。表の飾り窓にはダリの写真とダリの髭を象ったチョコレートが並べられていた(!)
その後、ようやく三日目にして古本屋へ向かう。もちろん、盲滅法、古本屋をめぐるというような冒険はやりたくてもできないし、時間と予算が限られたなかで、どうすればいいのか、これは考えておいた。言葉もおぼつかない(といっても日本でも古本屋ではそう会話は必要ない、しゃべっていると本が見られない)。日本でも同じなのだけれど、とにかくテーマを決めることだ。そうすれば、自ずと自分の趣味に合った本屋なり書物なりが決まってくるのではないか、それを探して歩けばいい。
ではテーマは何にするのか? これは前々から心に期するところがあった。『神戸の古本力』(みずのわ出版、二〇〇六年、p42)にバタイユの『Ma Mère』(1966)を図版として載せてあるが、神戸の長田でこの珍本を入手して以来ずっとその版元ジャン・ジャック・ポヴェールがひっかかっていた。この版元を軸にしてパリで古本を探したい。版元探しは高桐書院や甲鳥書林で経験済みだから、その面白さも分かっていた。よし、今回はジャン・ジャック・ポヴェールをキーワードに準備しようと検索を始めたのが出発の一月ほど前だった。
できればジャン・コクトーが関係していた EDITIONS DE LA SIRENE あたりを集めてみたいという気持もあったのだけれど、何分、高価である。もちろん高価といっても大先生方がお求めになられるようなレベルではない。しかし日本で均一本しか買わない男がいきなり何百ユーロもするような本は買えないのだ。その意味でジャン・ジャック・ポヴェールは、一部の刊行物を除けば、おおよそ普通の値段で流通している。
そしてまた版元の主であるジャン・ジャック・ポヴェールが二〇〇四年に自伝を出版していることも知っていた。先ずその自伝を手に入れたい。『LA TRAVERSEE DU LIVRE』(Viviane Hamy, 2004、「書物横断」とでも訳するところか)。最初に足を運んだ古本屋でまずこの本を買う、それがスタートだ。
その店はラメー通(Rue Ramey)の L'Odeur du Book(ブックの香り)。