時差ボケがつづくなか、二日目は妻の買物に付き合った。彼女は下調べが完璧だ。時差ボケをものともせずに七区のエコール・ミリテール(陸軍士官学校)にほど近い商店街で、パンはここ、バターはそこ、フロマージュはあそこ、ジャンボンはどこ、ショコラはどこそこなどと次々購入。荷物持ちに徹する。さらにサン・オーギュスタンのオジェ(Augé)という酒屋で「軽くて飲みやすい赤」を入手。ここは有名店のようで、客が絶えず、店内はボトルで埋め尽くされ、エレベータで地下のカーヴ(穴倉)から取り出してくるようなところ。アメリカ人が段ボール箱入りを何ケースも車に運び込んでいた。そんなところで安酒を買う。むろん店のお兄さんは顔色一つ買えず即座に「トレトレボン(とても美味しいです)」と一本差し出した。九ユーロ。このへんで昼食時間となりパリのファラフェル・サンドでは元祖と言われるシェ・マリアンヌまで足を延ばす。オテル・ド・ヴィル(パリ市庁舎)からけっこう歩いたユダヤ人街にある。これは前回来たときに行列ができていて断念した店だったけれど、今回はガラガラで、ちょっと悪い予感がしたが、その通りイマイチだった。実はその十メートルくらい先に現在まさに行列のできている店があったのだ。こと食に関してパリの行列は信じてもいい。
この後、とんでもない災難に遭うのだが、それはまた『spin』にでも詳しく書くつもりなので省略。上の写真は Rue Cler の Contretemps(不時の出来事、思いがけない故障)という新刊書店。美術書や写真集などをこういうふうにディスプレイしている店が目立つ。