安藤剛史『もうひとつの装丁』(二〇〇七年)。私家版といっていいのだろう、中綴じ本文28頁の瀟洒な冊子。安藤氏より頂戴した。内容は、既刊の書物、例えば、綿矢りさ『蹴りたい背中』、ボリス・ヴィアン『心臓抜き』、リチャード・バック『僕たちの冒険』などを、自分で装丁し直して、装丁作品集としたものだ。簡単に言えば、自作のプレゼンになっているわけだが、デザインのスマートさもさることながら、既成の装幀がいかにその本の素性を規定しているか、という事実を改めて認識させられた、その事実に愕然とする(ちょっとオーバー)。
ベストセラーであればあるほど(ブの105円にどっと出ている(?)『蹴りたい背中』など)安藤デザインになるとまったく別ものに思えて来る。装丁=アイコンというやつですか。そういう戸惑いが面白い。安藤氏は一九七二年生れ、最近、フリーになられたようだ。開いた頁の作品は共に小川洋子『ブラフマンの埋葬』と『密やかな結晶』。元版(講談社)の、前者はともかく後者は望月通陽で、悪くはないけど、この安藤デザインの方がカッコイイと思う。
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内田巌の「秋刀魚の話」は『繪画青春記』(太和堂、一九四八年)に収録されているとご教示いただいた。巌はその後、曉星から早稲田へ移るが、平野威馬雄とともに当時の曉星の二大不良と言われていたようで、放校同然に転校を余儀なくさせられたらしい。相当な反骨精神の持主だったようだ。
早稲田中学に転校した巌は美育部に入部した。その早稲田の美育部出身の画家の絵を集めた展覧会が、11月5日から12月12日まで、
銀座の永井画廊で「早稲田の宝展」として開催される。