生田誠・石川桂子共編『甦る小林かいち 都モダンの絵封筒』(二玄社、二〇〇八年)。昨年、山田俊幸他編『小林かいちの世界 まぼろしの京都アール・デコ』(国書刊行会)が出て、主だった絵葉書が網羅された。その刊行後に小林かいちの遺族が名乗りでるという事件が起った。今年の初頭には竹久夢二美術館で「夢二と謎の画家・かいち展」が開催され、『季刊銀花』に大きく特集された。そして、今度は絵封筒の図案を網羅したこの本の刊行である。これでようやく、小林かいち、本名・嘉一郎(四代目)、別名・小林うたぢ(う多路、歌治)、一八九六年生れ、一九六八年歿、などの基本情報が揃ったことになる。
あとがきによれば、生田氏は十六年前にかいちの絵葉書に出会って以来ここまでコツコツと蒐集を積み重ねてきた。コツコツというよりもナリフリ構わずと言った方が正確かもしれないが、とにかく生田氏なければ、山田教授の力もむろん無視はできないにせよ、いまだおそらく謎の絵師かいちのまま放置されていたであろう。
大正から昭和初めにかけてのひとつの到達点のような気がする。芸術性というか抒情味は夢二に遠く及ばないにしても、夢二が画面に出し切れない危なっかしさ、退廃の、低俗スレスレのコンビネーション、西欧のデザインと和風の図案がここまで交じり気無くひとつの形として示された例はそう多くないような気がするのだ。デザイン・ソースとして、今こそ「甦る」の言葉がもっともふさわしい。
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