はっきり言って、この『ほんまに』は『spin』02のメンツで構成されているので、あまり大袈裟にほめちぎるわけにもいかないが、なかなか読み応えのある一冊となった。恥ずかしながら、小生が巻頭で、今、このブログを書いている書斎を公開してしまっているのだから、興味のある方はぜひ注文してみていただきたい。けっこうすっきりしてまっせ。
それはともかく鈴木創士さんの本棚がすばらしい。アルトー、ランボーにサド、NRFのうすいクリーム色の背表紙が(といってもモノクロ写真だけど)整然と並んでいるのは壮観。例によってオッカムのウィリアムはうんぬんと近年のオブセッションについて寄稿しているのが、またまた鈴木さんらしい。
《私はできれば本などなしですませたい。それがかなうのであればいまでも手にしたいと思ってはいるが、絶対の書物などそもそも触ることすらできないのだし、本も人も浮き草のようなものである。無人島に流されるなら、あなたはどんな本をもっていきますか? じつにくだらない質問である。すでにもうほとんど無人島に流されたも同然さ、と誰それも言っているではないか。聖書? ロートレアモン? ダンテ? ランボー? だが、そんなものは全部とっくに捨ててしまったよ、とまだ言えないところが私の弱みなのかもしれない。それに、さらに言わせてもらうなら、実のところ他のことはどうでもいいのである。》
その鈴木さんが「ママ」と呼んでいる女性、株式会社ファミリアのデニムバッグなどを制作されている藤井茂美さんのインタビューも神戸の底力を感じさせる内容だ。とくに女子高生に人気のかわいいモチーフを作る藤井さんが、海文堂書店でたくさん買い上げる書籍というのが、予想外のアレとかコレとは、ヒャー、というかんじなんである。
牛津太郎氏の「オックスフォード通信」じゃなかった「本のある街角から」第二回は今回も駄洒落連発ながら、新刊書店と古書の関係を説いて建設的な意見が述べられている。とくに朗読会とディスプレーの充実を挙げておられるのは参考になるだろう。
その他の連載や「古本屋グッドデイズ」も読ませる。これは保存版ですぞ。
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暑かったのでセブンで缶ビールを二つ買った。レジに小学生が二人、部活帰りらしいスポーツバッグを各々肩から吊るして並んでいた。前の一人が板チョコのようなお菓子を買ってレジ袋に入れてもらった。次の子がカルピスウォーターを一本差し出した。すると三人目の小学生が横からやってきて
「レジ袋もろたらあかんやんか」
「……」
「袋に入れますか?」
子供は首をふる。オレンジ色のシールを貼る店員。なるほど小学生も意識が高くなっているのかなあと多少感心したりしたが、自分の番だと思って前に出ようとすると、三番目の少年はちゃっかりオロナミンC一本を差し出して買って行った。そっちのマナーどうなっとんじゃい! 冷えた缶ビールを持つ指が冷たくなってしまった。