ギ・ド・モーパッサンの詩集『Des Vers(詩)』(ALBIN MICHEL, 1927?、初版はCharpentier, 1880)。挿絵入りモーパッサン作品集の一冊。刊年は記載されていない。挿絵が二十数点は入っている。画家は G.FRAIPONT、小口木版は G. LEMOINE。フレポンは Gustave Fraipont (1849 Bruxelles -1923 Paris)だろう。パリで書籍の挿絵やポスターを多数制作したイラストレーター。ルモワンヌも名の知られた彫師だったらしい。買ったのは、古本まつりの百円均一かなと思っていたところ、巻末に鉛筆で500と書いてある。
何日か前に久し振りに『摘録断腸亭日乗』(岩波文庫、一九八七年)を読み返した。つぎのような箇所に鉛筆でチェックが入っていた。昭和十八年。
《三月十九日。陰。菅原君電話にて余が旧蔵のモーパサン短編集数冊間だ神保町進省堂といふ古書肆の店頭に飾り出されたる由を告げらる。黄昏往きて見るにその価一冊五拾円なりといふ。これらの書物は千九百五年米国華府(ワシントン)の書店ブレンタノにて一冊一弗半にて購ひ仏蘭西に渡りし後里昴(リオン)オベラ座前の書肆にて一冊三フランクにて皮綴にさせしもの。その中に紀行『水の上』の一巻は余が莫氏の文を原語にて読みし最初のものなりしなり。千九百十八年に至り余は思ふところありて断腸亭を引払ひ築地の路地裏に移らむとせし時蔵書の置場所に窮せしため和本屋竹田にたのみ大半を売却したり。今日法外の高価にて買戻せしは当時二足[ママ]三文にて売りしものの一部なり。感慨禁ずべからず。この夜枕上に旧蔵書を再読して覚えず曉明に至れり。》
断腸亭は父の購入した家(牛込区大久保余丁町)へ父の歿後にもどったとき、玄関六畳間を書斎としてこう名付けた。その家を売却したのが一九一八年で、築地二丁目に転宅している。ということでモーパサンを取り出してみた。