夏風邪を引き込んでブログ更新もままならなかった。どうやら、体調もほぼ平常にもどったので、ぼちぼち再開したいと思う。ご心配いただいた皆様に心より御礼申上げます。
考えてみると、こんなに寝込んだのは五年振りだ。どうしてそうはっきり憶えているかというと、ちょうど前回、熱を出してヒーヒー言っているときに、イラク戦争が始まったからである。二〇〇三年の三月二〇日だった。
そのときも京都での個展を終えた直後で、その最終日、三月十七日に、二条通のホテル・フジタのとなりにあるアイリッシュ・パブで、湯川書房の湯川成一さんに誘われ、古本ソムリエと三人で打ち上げを兼ねてごちそうになった。偶然にもアイルランドの祝祭日 St Patrick's Day(セントパトリックスデイ)だったので店はなかなかに賑わっていた。
その少し前、大阪から京都へ湯川書房が移転してしばらくした後、二〇〇二年九月発行の『sumus』第四号(特集=甲鳥書林周辺)でソムリエ氏と二人でインタビューをお願いした。初めは固辞されていたのだが、ソムリエ氏の巧みな勧誘で実現することとなり、これは湯川ファンの方々には喜ばれた。というのもあまりご自身のことを語るということがなかったからである。上の写真はそのときのものである。
そんなことから、以来、湯川書房の単なる冷やかしの客として親しくさせていただいてきたのだけれど、その湯川さんが今月の十一日に亡くなられた。十三日にご家族だけの葬儀が営まれたという。いずれ偲ぶ会がもたれるとは思うが、あまりに急なことであった。
二〇〇三年のセントパトリックスデイにもどると、そのころソムリエ氏の『関西赤貧古本道』(新潮新書、二〇〇四年)が進行している最中だった。湯川さんが、ソムリエ氏に向かってしきりと「塾をいっしょうけんめいやらなあかん」と繰り返していたのが印象に残っている。出版や古本にうつつを抜かしていてはあかんのや、まっとうに生きなさい。それは道を踏み外した湯川さん自身の実感だったのかもしれない。