最近入手した葉書二枚。上は関口良雄、下は衣更着信。
来世は
狂はぬ酒越(を)
朝から飲んで
命のかぎり
唄つて死にたい
関口無念
消印は「大森/24.7.72・8-12」。死去のちょうど一年前になる。
二枚目の衣更着は『荒地』の詩人。思潮社の現代詩文庫にも名を連ねている。香川県出身で英語の教師をしていた。小生の郷里の三本松高校と、その隣町の津田高校で教えていたはずである(詳しくは知らないが)。地元の詩誌『詩研究』(後『しけんきゅう』、十国修が一九五〇年に創刊)の重要な書き手だったそうだ。地元のことながらまったく何も知らない。『sumus』12に書いたように桑島玄二も同郷である。
消印は「香川・三本松/53.1.4/0-8」。宛先は笠原三津子、詩人でモダンアートに属する画家でもあった。文末にある《石原(吉郎)さんの死》は一九七七年十一月十四日。衣更着は二〇〇四年九月十八日歿。八十四歳だったという。
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『spin』02のトークバトルでお世話になった中島先生より『明治日本とイギリス』(甲南大学総合研究所、二〇〇八年)を頂戴した。中島先生は「明治のホームズー今井信之『英文小説講義』をめぐって」という論考を執筆されておられる。一読、さすが古本者の論考だと感嘆した。『英文小説講義』は研究社から明治四十三年に刊行されたホームズ註解本、要するにコナン・ドイルの「Adventure of Six Napoleons」原文に註釈をほどこしたある種の学習参考書。普通ならあまり研究対象とならないものだが、やはり見る人が見れば、いろいろ目の付けどころがあるもの。
詳しくは紹介しないが、ひとつだけ、「フーリガン」という単語にまつわる話が印象に残った。英国では一八九八年夏に日刊紙上で使用されて定着したということで、明治四十三年(一九一〇年)当時、日本の辞書にはこの語は収録されていなかったばかりでなく、英国の辞書でもほとんど言及されていない新語だった。今井はフーリガンを「無頼書生」と訳したが、これが本邦初訳のようである。第二次大戦直後に頻繁に用いられた「愚連隊」(不良少年の一群)に似ているかもしれない。