大鹿卓『三つの恋』(湊書房、一九四六年)。装幀は三岸節子。下図は見返し。ざっと目を通したが、このインドネシア(?)ふうの女性像と小説の内容とはまったく関係がないように思える。ま、いいか。
大鹿卓(おおしかたく)は金子光晴の実弟。明治三十一年、愛知県海部郡津島町生れ。本名秀三。金子光晴の本名は大鹿保和(戸籍上は安保)。二歳のときに金子荘太郎の養子となって京都へ移り、銅駝尋常小学校に入る。十歳で銀座の泰明尋常高等小学校へ転校、十二歳で曉星中学入学。卓の方は三歳で家族とともに東京へ出た。京都帝国大学中退後、秋田鉱山専門学校卒業。化学教師をするかたわら詩誌『風景画』『抒情詩』に参加。詩集『兵隊』刊行。小説に転じ、昭和六年、横光利一の紹介で『作品』に「タツタカ動物園」を発表。昭和十年、「野蛮人」が『中央公論』の懸賞小説に入選。会津八一、佐藤春夫に師事。著書に『渡良瀬川』(第五回新潮賞)など。