昨日の書皮(本の包装紙)に残っていた海文堂書店のレッテル。ちなみに「レッテル」というのは小生がもっぱら使っている用語で、ふつうには「シール」と言う人が多い。専門的には「書店標」などと呼ぶらしい。シールは「印章」が原義。封筒や洋酒に今でも見られるが、封緘の意味で赤い臘の上に捺してあるのがシール。メソポタミア時代から存在するもので小さな円筒形のシール(粘土の上で転がすと同じ絵柄が連続して型押しされる)はオリエント系の博物館には必ずある。
日本語になっているレッテル(letter)はオランダ語から入ったらしいが、ドイツ語でも「文字、活字」のこと。「商標」という意味でも使われるから(レッテルを貼るという言い方もあるね)、シールよりは実際に近いのではないかというのが小生の考え。
英語ではどう言うのか。たまたま検索していて「
Collecting Bibliophemera」というサイトがヒットした。そこには「BOOKSELLERS' TICKETS」とある。レッテルは1700年代から欧米では用いられているという。書店だけでなく、製本所、印刷所、文房具店なども使用したところから、広義で"book trade labels"と呼ぶのがよかろうとしている。当然ヘビーなコレクターもいるようだ。
まあしかし「チケット」はさすがに日本では切符のイメージが強過ぎる。「レーベル」ではなく「ラベル」(label、レーベル、貼紙・付箋)なら使ってもいいかもしれない。
フランス語では「エチケット」(étiquette、札、付箋、値札、レッテル。「礼儀作法」と同じ単語)と言うのだろうか?
上はラスキンの『胡麻と百合その他』に貼ってあったカナダ、バンクーバーの書店・文具店のレッテル。下は川端康成『高原』に付されている銀座・近藤書店のレッテル。貼る場所もそれぞれ。上は表3(裏見返し)のノド(とじ目)に近い方の下部の端。近藤書店はやはり表3の(といっても右開きと左開きでは逆なのだが)上部。少し端から離してあるのが独特。日本では角にぴったり合わせて貼る例が多いように思う。
『高原』は昭和十七年の本である。銀座の近藤書店で軽井沢を舞台にした短篇集を買ったのはどういう人だったのだろう。女性かもしれない。中程のページを開くと押し花の跡がくっきりと残っている。
見開きに影のみ残りわすれぐさ