『青空』9号(青空社、一九二五年十一月)。復刻版をぼちぼち読んでいる。淀野隆三の寄稿がたいへん参考になる。この号の梶井基次郎「橡の花ー或る私信ー」に花月園と京都パラダイスが出て来たので引用しておく。
《Oはその前の日曜に鶴見の花月園といふところへ親類の子供を連れて行つたと云ひました。そして面白さうにその模様を話して聞かせました。花月園といふのは京都にあつたパラダイスといふ様なところらしいです。いろいろ面白かつたがその中でも愉快だつたのは備へつけてある大きなすべり台だと云ひました。そしてそれをすべる面白さを力説しました。ほんとうに面白かつたらしいのです。》
《そして話はその娯楽場の驢馬の話になりました。それは子供を乗せて柵をまわる驢馬で、よく馴れてゐて、子供が乗るとひとりで一周して帰つて来るのだといひます。》
文中《京都にあつたパラダイス》というのは岡崎公園の南側、現在、山崎書店のある一角に大正時代後半に営業していた遊園地。《あつた》ということは、梶井が原稿を書いている時点ではもう存在しないということになる。珍しい京都パラダイスの全景が下記に出ている。
http://blogs.yahoo.co.jp/kanemaru1967/38997117.html
この写真で奥の山裾に建っているのは都ホテル(現・ウェスティン都ホテル)ではなかろうか。
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津田京一郎さんより『
北方人』11号(北方文学研究会、二〇〇七年九月)をいただく。津田さんが「「灣」と黒部節子」を寄稿されている。いい詩人だ。黒部節子「四角な水」最終聯。
夜 ゆめを見た。塔の円天井の下で 三人が
働いていた。大きな帽子をかぶり 灰色の顔
をうつむけていた。あの機械があった。カチ
カチとどこかで小さな音がしていた。どうし
たわけか みんな濡れていた。「水でしょう」
と 一人が近づいてきた。「ほら」 彼はわた
しに 人さし指と親指のあいだに一センチ四
方の四角い立方体をつまんでみせてくれた。
それは濡れたまま かすかに灰色に輝いて
いた。
「黒部節子さんを偲ぶ会」
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パソコンを買い換えたというMさんより久々の「古本だより」。
《今日は、大阪駅前のヨドバシカメラで必要なケーブルを買って、難波の天地書房へ。ここは句集がいつもたくさん並んでいますが、今日は「岩礁」水原豊昭和十二年沙羅書店を見つけました。函の痛みもなくとてもいい状態です。800円。これは嬉しい買い物。次に天三の天牛書店。店頭に昭和30年代の「宝石」乱歩編集が10冊ほど積み重ねてありましたが、目次を繰る気力なく店内へ。300円の均一棚で黒っぽい本を見つけて抜き出すと、「夜明け前の歌 エロシェンコ創作集」叢文閣大正10年9月第三版函でした。表紙の絵も素敵ですし、何より函の裏と見返しに「南天堂書房」のシールが貼ってあるのが魅力的です。有り難く頂戴してきました。このところ大正の本を見ると買ってしまいます。藤村の「佛蘭西だより」とか花袋の「一日の行楽」などを買いました。
天神さんと四天王寺が近づいて来ました。どちらも初日は勤務日です。どちらかはユウキュウキュウカにしたいと思っています。》
銀杏を拾ふつもりが古書の市