林蘊蓄斎の文画な日々
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創元 163号

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引き続き『創元』の表紙。これは163号(一九四二年六月)、デザインはむろん青山二郎で、昨日の図柄の反転。以下に紹介する記事は157号(一九四一年十一月)より。まずは山田珠樹の「長雨」。山田が東大を退職して療養のために鎌倉に移住したのは昭和十一年らしい。十八年に歿するまで七里ケ浜に住んでいた。この昭和十六年は長雨で敷地内の畑で作っていた野菜や果物がまったく穫れなかったそうだ。そうして話題は書庫へと転じる。

《私は今の家に入ると同時に本庫を建てた。鎌倉は湿気のひどい所ときいてゐたので、この点は非常に注意して建てた。それで今までは湿気からうける損害は比較的に少くてすんだ。》《あの長雨の間、こんな気候の時に本庫に入ることは身体のために好ましくないので入らないでゐた。》《ある時自分で入つて見て驚いた。一歩庫に入ると例のなんとも云へない不快な湿気の匂ひがする。これはいかんと思つて本棚によると、本がすつかり黴びてゐる。》《輸入途絶で今は大切この上ない本である。これがみすみす傷むのは大変な苦痛だつた。》

《あるよく晴れて、しかも風のある一日、窓をすつかり開け放ち、長男を動員して、雇つて来た男と、それに恰度来合せたある女学校の先生、これで黴拭きにかゝつた。》《一万冊近い本だから、大変な仕事だと思つた。しかしよく点検すると硝子戸をはめた本棚に防虫剤の袋を入れておいたものは被害を免れてゐることを知つた。皮製本、紙製本のものもまづよい。布製本のものだけは皆黴びてゐた。》

ということで先日(8/14)の『マラルメ詩集』もその中にあったのだろうか、気になる所である。また、同じ号に神保光太郎が「山羊の歌の頃」という中原中也の思い出を書いている。

《阿部六郎さんのうちで、彼と最初に邂逅した》《その時、同席して、阿部さんのもう一人の友人がゐた。話がどんな風に進んで行つたのかも忘れてしまつたが、急に、中原とその友人とが、なぐり合ひをはじめた。中原はわけもわからない叫びをくりかへしながら、あのちひさなからだでぶつつけるやうに突撃しては、その友人の腕力に撃退され、なぐりつけられた。》

これは中也が大岡昇平らと同人誌『白痴群』を創刊(昭和四年)した少し後らしい。当時の中也はどこでもこんなふうに荒れに荒れていたようだ。そして神保が最後に中也に合ったのは《愛児を喪なつた頃、頭髪を切り、或る会合に出て来た夜》というから昭和十一年十一月以降、おそらく十二年ではないだろうか。

《そのときの彼は、無口で温順で、素直であつた。からまりもしなければ、悪口も言わなかつた。たいへんやさしい中原であつた。》

ちなみに神保光太郎(じんぼ・こうたろう)は本名「みつたろう」だそうだ。高村光太郎も本名は「みつたろう(みつたらう)」。「こうたろう」も旧かな遣いでは「くわうたらう」。高村光太郎は中也の詩集『山羊の歌』の題字を書いている。

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『大竹伸朗 モロッコ日記 カスバの男』特装本(求龍堂、一九九四年)の広告ハガキ。大竹伸朗ネタはこのこくらいしかないかな?

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昼間は三十度ほどにもなるが、朝夕は涼しくなった。雨音にあわてて剪定したクレマチスを取り込む。

ふたゝびの花待つ鉢を秋出水
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by sumus_co | 2007-09-11 17:25 | 青山二郎の本
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