
『気まぐれ美術館』(朝日新聞社、一九九七年)展の図録。洲之内徹没後十年に目黒区美術館他で開催された。ということは今年は没後二十年目にあたる。命日は十月二十八日。先日、葉書を頂戴したからというわけでもないだろうが、今日、突然、ある編集者から電話があった。洲之内徹の小説集を復刊するということに関しての、ちょっとした問い合わせだった。いちおう小生はネット上に
洲之内徹略年譜を公開しているので、そこからたどったらしい。未発表の評論なども収録したい意向だという。奇特な企画を通す出版社もあるものだ。もちろん新潮社ではない。
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堀辰雄に「旅の絵」というエッセイがある。初出は「新潮」1933(昭和8)年9月号。たしか竹中郁の『一匙の雲』(ボン書店、一九三二年)の出版記念会に参加がてら神戸を訪れたのだった、と思っていたらそれは『象牙海岸』(第一書房、一九三二年十二月)ですよとご教示いただいた。訂正します。そのときの様子を印象深く書き留めており、堀辰雄のなかではいちばん好きな作品である。
堀はトアロードの突き当たりにある安宿ホテル・エソワイアンに泊まり神戸をあちらこちら散策する。そのときに海岸通のある薬屋で海豚叢書の『プルウスト』を購入するのだが、その薬屋とは英三番館と呼ばれるトムソン調剤薬局(J.L.THOMPSON & CO. DISPENSING CHEMIST)のことで、外国人向けの雑貨店を兼ねていた(現在は旧居留地の三井住友銀行の一角らしい)。
堀が買ったという《海豚叢書の「プルウスト」》とはいったいどんな本なのか? 気になって、あれこれ検索した結果、サミュエル・ベケットの『Proust』(Chatto & Windus,1931)だろうと見当をつけることができた。これは「Dolphin Books series」の一冊なので「海豚叢書」でまず間違いないだろう。ベケットの実質的な処女作らしい。堀が購入した前年に刊行されているということは、トムソン調剤薬局には新刊書として並べられていたと思ってもいいかもしれない。

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ナベツマのブログにキアゲハの羽化写真がアップされています。ご興味のある方はぜひのぞいてみてください。
MushiQuest「王妃、超変身ちゅう」の巻