
伊吹武彦『ベレー横町』(中外書房、一九五八年二版、装釘=すけたけ・おさむ)。渡邊一夫とともに頂戴した一冊。伊吹は大阪生れ、三高から東大仏文へと進み辰野隆の指導を受けた。三高そして京大で永く教鞭をとり、退官後は関西学院大でも教えている。
三高時代は北川冬彦、飯島正、大宅壮一、山口誓子らと同期。三高の教師として武田麟太郎や新村猛を教えたとこの本にはある。むろん京大では杉本秀太郎、山田稔、多田道太郎、大槻鉄男、生田耕作らの師ということになる。
辰野隆ゆずり(?)のインテリ随筆はあまり面白くないが、三高時代の回想となると俄然生彩を帯びてくる。淀野隆三より少し年上。淀野日記にも出てくる五月一日の三高の記念祭(運動会)についての記述がたいへん参考になる。一般市民もどっと押し寄せる京都の一大イベントだったそうだ。
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『プルースト全集第七巻 見出された時**』(nrf, 1932)、in-octavo(八ツ折、in-8゜、この本は227×140mm)版。下鴨で300円なり。バラで買っても意味ないのだが、つい。で、青柳いづみこ・川本三郎監修『「阿佐ヶ谷会」文学アルバム』(幻戯書房、二〇〇七年、装幀=間村俊一)を読んでいると、『新潮』で上林暁の担当編集者だった前田速夫氏のエッセイ「町内の先生」に、ベッドで寝たきりの上林から『失われた時を求めて』全七巻セット(新潮社)を届けるように頼まれる話があった。
《ひところは好んで短い童話を読んでいた先生が、長大なプルーストに挑むまでに体力が回復したことは慶賀すべきことと嬉しかったが、なんと半年もしないうちに、全巻の厚表紙はよれよれになって、ページも手垢で黒ずむまでになっていたから、最後まで読み通してしまったことは間違いない》
そして前田氏はプルーストが上林の創作に良い刺戟を与えたのだと断定している。なお前田氏自身は第一巻の途中で挫折したままだそうだ。
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