青柳いづみこ・川本三郎監修『「阿佐ヶ谷会」文学アルバム』(幻戯書房、二〇〇七年、装幀=間村俊一)が届いた。A5判、350頁、角背の厚表紙。ずっしりと持ち重りがする。最近の傾向として束(つか)が出て(すなわち厚くて)、軽い本文用紙が人気なので(これだと中身は薄くても本は厚くなる、嵩高紙という)、この重さはとても心地良い。装本はつねに白の美しさを意識している間村さんらしい見事さ。
文学アルバムと言うだけあって写真がどれもいい。ほとんどオヤジばっかりしか写ってないけど、私小説好きにはこたえられない。井伏鱒二と上林暁が将棋盤をはさんで対局し、青柳瑞穂と外村繁が覗き込んでいる一枚は記憶にある。将棋盤がじつに安っぽいのがまたいい。駒がみょうに新しいのは雑誌撮影(?)のためか。駒台がないのがいかにも縁台将棋のようで好ましい。それにしても外村繁はどの写真で見てもうつむき加減だ(よほど苦労したのだろうか)。もう一枚、火野葦平が鍋奉行をやっている写真はよく撮れている。撮影者・中島健蔵はセミプロの腕前と言っていいだろう。
後半には最近の阿佐ヶ谷界隈を撮った写真が載っている。文学散歩の気分が読者にも乗り移る。岡崎氏の散歩レポートが今の阿佐ヶ谷・荻窪の有り様を伝えてくれる。それにしても太宰治の住んだ「碧雲荘」は素晴らしい(!)。そして何より萩原茂氏の解説・文献目録・年表がじつにじつに労作である。これからゆっくり収録されている阿佐ヶ谷会のメンバーたちの文章を味わおう。
÷