先日のハマスホイはけっこう好評だったので、しばらく、本箱のなかから画集を引っ張り出して紹介して行こうと思う。まずはワイエス。大学時代に大規模な回顧展を竹橋の近代美術館で見た。それまでは、アメリカ合衆国の外では、そう知られた画家ではなかった(ヨーロッパではさらに遅れて紹介されたようである)。
テンペラという画材も目新しいものだったし(テンペラそのものは古くからあるが)、写真的なショット(たしかにウォーカー・エヴァンスらと共通する)を絵画として職人的に仕上げるとともに詩的な物質感を強く感じさせる画面はじつに新鮮だった。
当時、池袋西部美術館のアール・ヴィヴァンにワイエスの画集が入っていて、どうしても欲しかったが買うお金がなかった。それは後年、京都で知り合ったアメリカ人がプレゼントしてくれるという不思議な出会いになるのだが、上の本はトマス・ホーヴィング『アンドリュー・ワイエスの二つの世界』(HOUGHTON MIFFLIN COMPANY, 1978)で、古書店街の草で買ったもの。
著者のトマス・ホーヴィングは日本でも馴染みの名前だろう。メトロポリタン美術館長を辞めてから美術解説書やミステリーをいくつも発表している。小生も『名画狩り』(文春文庫、一九八九年)と『謎の十字架』(文藝春秋、一九八六年)は読んだ記憶がある。どちらもさほど面白くはなかったが、欧米の美術館の内情はよく分かった。
ワイエスはあまりデッサンが上手ではない。父親のN.C.ワイエス(『アーサー王と円卓の騎士』福音館書店、一九七二年、の挿絵が有名か)の方がずっと器用である。しかし、上手さに流れない執拗さがワイエスのいいところ。色彩もシブイ。
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木綿屋おせん様よりコメントいただいたが、なぜか沢山おなじコメントが届いており、減らして一つにしたところ非公開モードになってしまった。申し訳ないので引用しておく。
《『岩根豊秀の仕事場』のことを書いていただきありがとうございます。
以前「
サンライズ出版は良心的な会社だが、名前がパチモンみたいで……」と書かれていたことがあり、結構ショックでした。
そんな訳で(?)、昭和の初めからサンライズは仕事をしていたという展覧会をすることになりました。》
パチモンとは思わないが、どうしてもメロンぱんを連想してしまう。ちなみに関西では、ふつう丸いのを「サンライズ」、アーモンド形を「メロンぱん」と呼ぶ。その違いの理由は諸説あって、蕎麦の「もり」と「ざる」のごとく、定かではないが、「メロンぱん」には餡(白あん)が入ることが多いようだ。アーモンド形ではなく「まくわうり」形らしい。
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最新の装幀本が届いた。浦野興治『諫早思春記』(右文書院、二〇〇七年)。ゲラで読ませてもらったが、長崎弁がとても雰囲気を出している青春小説。「なんばしとっと!」「どぎゃんもせん!」。武田花さんの写真が見事だ。カバー、表紙、扉と三点使わせてもらった。「装幀=林哲夫」欄参照されたし。