『新刻正字通』の序。ここまでに扉と標語と口絵二点がある。序文の筆者は増田貢。検索していると関場武「明治期の辞書・字典 青木輔清の著作の中から」という論文が見つかった。そこにこの本の詳しい書誌も載っており《表紙:黄色布目地紙に紗菱形模様空押し》としてある。ということは和綴本で、昨日の書影とは異なるということだ。四つ目綴じと昨日は書いたが、これは誤りで、天地に糸が回っていない。おそらく刊行の初めから洋装本として綴じたということだろうと思う。
明代、『字彙』を下敷きに『正字通』が編まれ、『正字通』を基に『康煕字典』が編纂されたが、その『正字通』のダイジェスト版がこの『新刻正字通』である。本家『正字通』には33,671字が収録されているというが、『新刻正字通』にもざっと一万字は収められている。名刺より少し大きい程度の豆本(厚さは25mm)なのに、である。
それにしても画数の多い漢字がぎっしり並んでいて、線の細い銅版印刷でなければとうていこんな豆本には収まらなかったろうと思われる。ここに収録されている漢字のなかで最も画数の多いのはおそらく龍が三個(下に二つ並べ、上に一つ載せて一文字とする)ではないだろうか。龍は16画なので48画。読みは《タフ》(トウ)、意味は《タツ/トブ》(龍が飛ぶ)だとか。
しかし「漢字」としては、その上にさらに龍四つという文字(64画)があり(「興」四つとともに)最も画数の多い字とされている。読みは「テツ」、意味は「言葉が多い」だそうだが、そこまで積み上げなくても……。
龍がいったいどれぐらいうるさい存在かというと「竜王の娘 柳毅」(今村与志雄訳『唐宋伝奇集』岩波文庫)によれば、こんな感じである。
《稲妻のような眼、血のしたたるばかりの舌、朱色の鱗、火焔とみまがうたてがみ。頸に一本の金のくさりを引き、くさりに玉の柱を牽き、何千という雷や何万という稲妻が、その身体の周囲を激しくまわり、雨、雪、霰、雹が、一斉に降りそそいだ》
ピカピカ、ゴロゴロ、ジャラジャラ……ううむ、これは本当にうるさそうだ。もし四頭も龍がいたらたしかに耳をつんざくだろう。それぐらいよく喋る人間が中国にはいるというのだろうか(?)。
÷
ahoaho-expoにヘンな本がアップされているゾ!