フランク・パブロフ『茶色の朝』(藤本勇一訳、メッセージ=高橋哲哉、大月書店、二〇〇三年、絵=ヴィンセント・ギャロ)。茶色 brun はナチスの制服色でありナチズムの象徴である。これは金子マーティンさんに教わった。氏の著書『神戸・ユダヤ人難民1940-1941』(みずのわ出版、二〇〇三年)を装幀したときに、特に意識せずにジャケットを茶色にしたところ、そう指摘された。
まあ、それはピッタリだったからいいようなものの、色使いにも注意が必要だ。ずっと前にも書いたと思うが、ナチスが用いたモダンなサンセリフの書体があって、それも安易には使用できないということを松本八郎翁から経験談としてうかがったことがある。デザインは思想を現すということか。
今回のフランスの大統領選ではそうでもなかったが、前回には決選投票にまで残った極右候補の躍進に対する寓話としてパブロフは『茶色の朝』を書いたそうだ。茶色以外の犬や猫を処分しなければならないという法律ができて……というような短いが不気味な話。絵を付けている
ヴィンセント・ギャロは『バッファロー'66』のギャロである。
本日、ひさびさに古本市場へ出かけた。ハナギレを探すため。105円で気に入ったのを買って、バラしてハナギレだけを取り出し、装幀原稿の見本に貼付ける。ハナギレはハードカバーの背の上端と下端に接着してある小さな布のこと。百円棚のハードカバーをしらみつぶしにちょっと引き出して上からのぞく。ヘンな客。そこで『茶色の朝』を発見して思わず購入したのであった。
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皓露書林の金井一義さんがつい最近亡くなられたとのこと。昨年十二月の海文堂書店の「三箱古本市」に出品してくださって、その会場で一言御挨拶しただけだが、かつての店の様子とともに忘れられない古書店人である。ご冥福をお祈りする。皓露書林については『神戸の古本力』(みずのわ出版)を参照されたし。