『サンパン』13号やっと出来た。一時はどうなるか、続刊が危ぶまれたのだが、完全同人雑誌として復活した。
曽根博義 雑誌『小説倶楽部』と小林多喜二
菅野俊之 詩人長谷部俊一郎の著書
樽見 博 戦争俳句私論(二)俳句入門書(中)
杉田達哉 本の余白に(3)中原中也『骨』
盛 厚三 フリッツ・ルンプ物語
矢部 登 たまふり
柳瀬 徹 「女のひとを読むノート」連載のためのはしがき
西村義孝 吉田健一の私家版『でたらめろん』探索記
島 良作 本と往く旅 ジュネーヴ
荻原魚雷 一オクターブ高い声と吉行淳之介
中尾 務 富士正晴、島尾敏雄(7)
春日井ひとし 大阪の里見弴(三)
林 哲夫 小野松二と作品社(その十二)
向井透史 早稲田古本屋店番日記
佐藤真砂 目録の終わりに——「机上のK・K氏」の始まりの話
南陀楼綾繁 〈聞き書き〉小沢信男一代記(その11)
執筆者近況報告
お詫びの編集後記
12号の同人寄稿者から一名が脱し、新たに柳瀬、西村、荻原の三氏が加わった。それだけでかなり新鮮な感じが出ている。とくに荻原氏の連載は『sumus』続篇の趣であり、例によってその経験値の広さ深さに驚くばかり。願わくば、その宝物を簡単に数行で片付けず、もっと掘り起こして細部を描写してもらいたい。論より証拠を望む。
曽根氏による小林多喜二作品の新発見譚もすごい。
デイリースムースでも紹介した『小説倶楽部』の国会図書館に所蔵されない号に小林多喜二の「老いた体操教師」が掲載されていた。多喜二研究者始め誰も知らなかった。雑誌は深い。
「執筆者近況報告」が長くなってこれだけでもちょっとした読物。松本翁のお詫びも含め、読みどころ満載の『サンパン』新生第13号なり。
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『イギリス的風景 教養の旅から感性の旅へ』(NTT出版、二〇〇七年)の著者・中島氏より、五来達が『文庫』一九四一年六月号(三笠書房)に発表した「「失ひし時を索めて」鑑賞」コピーをいただく。時間の伸縮自在という観点からプルーストの読み方をうまくまとめてあって参考になった。ただ、どうして表題に「失ひし時を索めて」という題名を使ったのだろうか?
自らの訳「失はれし時を索めて」 をなぜ採用しなかったのか、不可解である。
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ホオスよりひ冷つこい水春あつし