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contre sainte-beuve

contre sainte-beuve_b0081843_2042613.jpg


もう少しプルーストについて。『contre sainte-beuve』(Éditions Gallimard, 1965, photo-graphisme h.cohen)。読んだと言えるほとんど唯一のプルースト。ただし途中で投げ出したまま。新潮社版『失われた時を求めて第七巻』(一九五五年)卷末年譜では

《一九〇八年 (中略) またこの頃より『サント・ブーヴに反駁す』を書き始める。これは『失われた時を求めて』に直接つながるもので、そのばらばらの断片をまとめて、ベルナール・ド・ファロワの編輯で、一九五四年に刊行(一巻)》

としてある。これはその文庫版。鈴木創士氏は『魔法使いの弟子』(現代思潮社、二〇〇六年)に収められた「長い長い不眠の物語」において『サントーブーヴに反論する』の冒頭を訳出しておられる。ごく一部を引いてみる。

《……その時代、私は夜の十時に床につき、何度か短く目を覚ますだけで、翌朝まで眠っていた。たいていはランプを消した途端にすぐさま眠りに落ちるので、眠るんだなと心に思う間もなかった。》

……, où j'entrais dans mon lit à dix heures du soir et, avec quelques courts réveils, dormais jusqu'au lendemain matin. Souvent , à peine ma lampe éteinte, je m'endormais si vite que je n'avais pas le temps de me dire que je m'endormais.

「コンブレエ」の出だしとほとんど同じではないか。ただし、この文章の前にもう一つ文章があり、その時代云々は七行目になる。これを読むと、先日引用した「コンブレエ」の最初の一文がどれほどの推敲を経たものか、素人なりにも多少は分かるような気になる。大きな違いは、動詞が半過去形で書かれていることだろう。ある意味、プルーストはしごくまっとうに「時間」を記述している。

また、「コンブレエ」では de bonne heure(早く)となるところが夜十時と特定されていること、および蝋燭がこちらではランプだというところにはちょっとひっかかる。プルースト・マジックなのかも知れない。

上記年譜によれば、モンクリフによる英訳は、一九二二年九月、プルーストが気管支炎で倒れそのまま帰らぬ客となる二ヶ月ほど前に刊行され始めている。で、もうひとつ、たしか「つばめ」さんに頂いたコピーだと思うが、新潮社版の月報2に淀野隆三が「その頃の思い出」という文章を寄稿しているのを見つけた。それによれば、彼ら四人が『失ひし時を索めて』の翻訳を開始したのは昭和四年(一九二九)の七月、淀野二十五歳、だった。

それを知った『文学』の同人で編集をしていた犬養健が、堀辰雄か永井龍男を通して、連載しないかと声をかけてきたそうだ。昭和六年に単行本として刊行され、それを読んだ親友の梶井基次郎が感想の手紙を寄越し、すでに触れたように長谷川巳之吉の非難、そして川端康成の擁護があった。しかしこの時点で淀野隆三はそれら論争の内容を記憶していなかった。反駁文をしたためたことも恐らく忘れていたのではないか。「その頃の思い出」はこう結ばれている。

《二十年という歳月は、プルーストではないが、私から怒りと喜びとを二つながら奪ってしまった。》

÷

本日は領収書の計算に終始。去年は思ったほど資料費(古書・新刊)を使っていない。やはり「引越」ということが頭にあったため買い控えたようだ。何だか物足りない。

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思うところあって俳句をタイトルにするのはしばらく止めることにする。

÷

岩田さま
3月16〜18日に上京する予定です。
by sumus_co | 2007-02-21 21:30 | 古書日録
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