ポオル・モオラン『世界選手』(飯島正訳、白水社、一九三〇年、装幀=阿部金剛)。白水社が昭和五年に江川正之を雇って続けざまに刊行した文芸書のなかの一つ。九月に『怖るべき子供たち』(コクトオ、東郷青児訳)を出してこれが良く売れた。十月に『地獄の季節』、十一月に『世界選手』。昭和六年には小林の『文芸評論』、横光利一の『機械』、デコブラ『恋愛株式会社』(東郷青児訳)、宇野千代『大人の絵本』などなど。ところが良かったのは出だしだけで、とくに『恋愛株式会社』は大掛かりな宣伝攻勢をかけたもののさっぱり売れなかったようだ(清水文吾『寺村五一と白水社』日本エディタースクール出版部、一九九〇年)。
『世界選手』の表紙下半分に張ってある銀色のホイルが傷んでいるが、デリケートな素材らしく、大貫伸樹氏や西野嘉章氏の著書に出ている書影にも多少の難が見える。
成績不振のためかどうか、江川正之は白水社を辞して、昭和七年、限定書出版を標榜する江川書房を興す。このとき二十二歳だったという。すると、昭和五年には二十歳である。二十歳の青年に白水社は命運を託したのだ。ただ、小林秀雄も、飯島正も、白水社の実質的責任者だった寺村五一でさえも二十八だった。東郷青児は三十三、阿部金剛は三十歳だった。江川は永い目で見ると凄い仕事をしたことになる。
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恵文社から古本市のスリップが戻って来た。売り上げ分、553枚あった。しかし何と言っても単価が安いので、売り上げは例年並み。引越を控えて本が減ったことを善しとする。
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ギャルリ・プチボワからDMをいただいた。大阪の南堀江……? と思ったら、天音堂ギャラリーさんのお知り合いのようである。いい作家をやっておられる。
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書評のメルマガにも書いたように『spin』という雑誌がみずのわ出版から近日中に創刊される。まだ出来上がっていないが、届き次第、詳しく紹介したい。小生は淀野隆三日記をひたすら読むだけの連載をして行くつもり。また、すったもんだあった『サンパン』もそろそろ13号が出るのではないだろうか。