『梶井基次郎小説全集』(作品社、一九三六年)淀野隆三編。上下二冊。上巻は一月十九日、下巻は四月五日発行。題字を書いたのは川端康成。後年のようなクセのある太い筆跡ではなく、例えば、褚遂良(ちょ すいりょう 596〜658)あたりに倣ったのではないかと思われる作風である。樹皮の断片が漉き込まれた紙を函と表紙に用いたのは当時の民芸の流行と関係があるかもしれない。小野松二と淀野隆三が協力して作った本。
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某氏に所用で電話。雑談していると、現在入手不能となっているあの人のあの本がちくま文庫(おそらく学芸だろうか)に入るらしいという話を聞く。本当ならとても嬉しい。元本は持っているけどね。増補が期待できる。
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『爐邊子残藁』、今見ると73,000。
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このところ文字が気になっている。『文字力100』の文字ではなく「書」の方である。だから古書目録でもそっちの方に目が行きがちだ。銀座松坂屋の『古書籍・書画幅大即売会』(2/1-5)の目録もそうだった。というか、京都の書画屋さんがかなり参加しており、京都目録風の図版内容になっているせいもある。
草ハ咲くかまゝのてふてふ 山頭火
この軸が38万円也。泉鏡花の短冊が18万円也。
まな板に旭さすなり芹薺(なずな) 鏡花
値段はさすがだが、どちらもさほど食指は動かない。グッとくるのは『南石窟寺之碑』一帖(秋山公道旧蔵、墨拓の折帖)だなあ……というところに、えびな書店の『書架』77号が届いた。巻末のエッセイは白井晟一の建築と書について。白井の書「石知仏定」の品格に参ってしまったそうだ。それは30万円で出ているが、確かにカッコイイ。しかしその上に出ている菅茶山の殴り書きっぽい書幅とか、小杉放菴の短冊が好きだなあ……手頃な値段だし。とは言うものの、眺めるだけで、終了。
や満越志天飛比行久雲者飛留酒乃ほろ〜酔能和可心奈里 放菴
やまこして飛ひ行く雲はひる酒のほろほろ酔のわか心なり