家探ししばらく中休み。隣家の主婦が近所に一軒あると知らせてくれた。行ってみると、こちらの意志が充分伝わっていなかったため、それは売家だった。家を買うというのは考えない、というか買えないし、郷里には古家もある。
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辻馬車の周辺をおさらいしている。藤沢桓夫の「結婚の花」(『辻馬車時代』改造社、一九三〇年)を読んでみた。これは『辻馬車』同人の中から崎山猷逸とともに選ばれて執筆し『新潮』大正十五年十月新人号に掲載されたもの。梶井基次郎が『青空』同年十一月号で以下のように批評した。
《實感を伴はない文字の遊戲と思はれてゐたものが、強い實感を現すための新しい手段と見直せるやうになつた。それでもなほ得心のゆかぬ個所もある。それは作者と私との趣味の相違や、私の讀み方の不足や、作者の技巧の未完成が混り合つて原因してゐるのであらうが、そんな個所は末梢的であつて、何よりも私はこの作品を貫いてゐる作者のまともな精神に觸れて心強く思つた。》
梶井はなかなかの読み巧者だ。後年、藤沢が新聞小説で名を挙げるのももっともだと納得できる通俗性(良くも悪くも)をはっきり示している。