上田秋成室遺草『夏野の露』(富岡謙三、一八九三年)。昨日の夕、ある忘年会に誘われて四条大橋東詰めのレストラン「菊水」へ行った。途中でちょっと寄り道して買ったのがこの本文十頁ほどの小冊子である。序文が洛南老樵閑田廬蒿蹊(伴蒿蹊)、跋が余斎こと上田秋成。校訂兼発行者の富岡謙三(1873~1918)は画家として知られる富岡鉄斎の子。明治三十三年に創立された関西文庫協会の会員であった。明治三十四年の第九回例会で講演を行っている。
《会員富岡謙三氏は「図書館に対する希望」てふ演題にて古文書の蒐集は素より結構の事なるも先づ夫れより急務なるは現今京阪地方にある古寺院に散在せる古版本古鈔本又は絵巻物中古来の風俗調査に必要なるもの等の模写若しくは収拾を京都大学図書館に望み字書索引年表地図等の整備を各図書館に望み其例証として古書に関する豊富なる智識を傾瀉して大に人聴を聳かしたり》(
http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/60his/6-1_HONBUN.html)
『夏野の露』本文は上田秋成の妻女の遺稿である。おそらく原本は富岡が発見した稀覯書なのであろうが、その復刻ということになる。内容はともかく、この仮名の活字に惹かれて買った(百円)。印刷者は大津の原田熊平(大津桝屋町活版印刷)である。
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登尾明彦『パンの木』(みずのわ出版、二〇〇六年)。拙作装幀本の最新刊。兵庫県立湊川高校で長らく教鞭を執られて、現在は引退されて執筆に勤しんでおられる。平明だが含蓄に富んだ詩である。「稼ぎ」全文。
パンは誰でも焼けるが
よい味は
誰でも出せない
焼けない日もある
売れない日もある
だが
それでよい
強がることもない
焦ることもない
一日分の稼ぎがあれば
それでよい