世界文芸大辞典付録月刊「世界文芸」第五号(中央公論社、一九三六年八月)。日夏耿之介「稀本ばなし」を面白く読んだ。まずは自分が所蔵するビュルガー『
レノオレ』の二十五冊限定版第十四番本を自慢する。D.G.ロゼッティが十六歳のときに翻訳し一九〇〇年に刊行した、と書いてあるので Abebooks.com で検索すると下記のような本だということが分かった。値段はまちまち、69〜308USドル。むろん限定版ではない。
Lenore. BÜRGER, Gottfried August. ROSSETTI, Dante Gabriel (Translator).
Book Description: London: Ellis And Elvey, 1900., 1900. Hardcover. Prefatory note by William M. Rossetti. 8vo. pp. 35. original giltstamped cloth, edges uncut (covers lightly soiled). First Edition of D.G. Rossetti's translation
そして次に、友人である国文学者
山口剛と浅酌談笑していたときに、どちらか先に死んだ方が、自分の一番大事にしている本を相手に譲るという口約束をした、という話に移る。日夏はむろん『レノオレ』で、山口は珍蔵する西鶴の『近代艶隠者』である。ところが、日夏が病みながらも永らえているのに対し、山口は間もなく死んでしまう。
《彼の西鶴本は自然何処やらの図書館に収まり、私のロゼッティは今まだ私の赤い支那机の上に白く乗つかつてゐる》。
山口が卒したのは昭和七年。そしてその『
近代艶隠者(キンダイ ヤサ インジャ)』はどうなったかというと、おそらく現在、早稲田大学図書館に入っているのが山口旧蔵書であろう(図像が公開されている)。
《「君なら八百両で譲つてやる」と故人山口が私によく云つたが、それもこれもウソ八百、それよりも生きてゐて欲しかつた彼は死んで、鶴(カク)が奇文のみ稀本ならぬ活版本で今も手許に残るのは、どうやら我身みた様でつくづく侘しい感じがする》
では日夏の『レノオレ』の方はどうなったのか? ちょっとした検索では分からない、残念。日夏の著書は飯田市立図書館に入っているようだが。
÷
三箱古本市の準備をする、あれこれ幅広く取り混ぜてスリップを挿してゆく。単行本は20円〜800円、文庫本は20円から300円までという価格帯に絞る。むろん安いだけじゃない、内容的にもお買い得感バッチリ(自分が客だったとして、この箱なら全部買いたいくらい! って全部買ったものじゃん)。ごく一部にもう少し高いものを混ぜておく。