神戸の古本屋を調べるため『神戸古書籍商組合会報』のコピーを読んでいる。第九号(一九三〇年)に「チャンスと事業」という投稿が載っており、興味深いと思うのでちょっと引用しておく。筆者は元町一丁目神港堂書店の谷富蔵である。
《小生は五十年の内に来たな!! と思つた事が二回ある。一回は明治三十六七年頃小生二十三四才の頃で朝鮮合併前後で我が書籍商の最不況の最中であつた。其時分小生は中西屋の店員で毎日の様に臨時市会があつたが大概大店の整理品一山百文で投げ出され別して教育書類ときては平均一冊五厘か一銭。これを一纏めにして中西屋は倉庫の三階迄積み込んだものであつた。其内にボツボツ朝鮮及支那方面から図書館建設のために纏まつた大口の注文が這入りだし又支那留学生が充満してそれらが買ふ書籍は多く其当時の新刊物ではなく半世紀も遅れた例の一山百文の物だから面白い。それが一人来たら少く共二三十円宛の買物をする—こうして一冊五厘一銭の品が五十銭一円と飛ぶ様に売れて仕舞つたわけだ。
第二回は例の関東地方大震災の時だ。其時には小生はチャキチャキの神戸ッ子になつてゐた。》
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組合と言えば、石神井さんと月の輪さんが
東京古書組合の理事になったそうだ。それぞれ広報と機関誌担当だとか。月の輪さんが『古書月報』(業者向けの機関誌)を編集するということか。
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この夏に見たレンタル映画で印象に残るもの二作。
「21グラム」(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、2003)。「アモーレス・ペロス」のイニャリトゥだけあってラテン系独特の底なしの暗さを全面に出しながら、最後まで引っ張ってしまう。交通事故と心臓移植からドロドロの愛憎が描かれてゆく・・・。ベニチオ・デル・トロが目立っていた。ナオミ・ワッツも芸達者なところを見せている。ショーン・ペンはどうも何の役をやってもいまひとつだが、少なくとも「ミスティック・リバー」よりはずっと良かった。
「小さな中国のお針子」(ダイ・シージエ、2002)。一九七〇年代、文革時代に山岳地帯の寒村へ再教育のために送り込まれた都会の青年二人と美貌の村娘の青春を描く。言ってみれば、「世界ウルルン滞在記」のロングバージョン。演出は原作者でもあるダイ・シージエで、ややぎこちないし型通りの感もまぬがれないが、まあ、時代の空気は伝わって来る。