
三笠書房の検印紙。内田百間『鶴』(三笠書房、一九三五年)。紙の寸法が47×68mmと、おそらく検印紙のなかでは最大級だろう。『sumus』12号の49ページに掲載している第一芸文社の検印紙が、知るかぎりでは、最大ではないかと思うが、他に第一書房や新興出版社、芝書店などもかなり大判である。
それはともかく、この図案が谷中安規ではないか、という指摘を知人Tさんよりいただいた。なるほど、たしかにこれは安規にちがいない。ただし『谷中安規の夢』(渋谷区松濤美術館、二〇〇三年)をざっと繰って見たのだが、図版はもちろん、この点に言及している文章もないようだった(ご教示乞う)。参考までに内田百間作・谷中安規画『居候匆々』(小山書店、一九三七年)の目次の装飾を掲げておく。他にも似たような額縁ふうの飾りを安規は好んで制作している。
さっそくEさんより百間の検印紙についてご教示いただいた。深謝です。
《図案は安規のものだと確信しているので、以前から注目していました。残念ながら作風以外に決定的証拠はありませんが、『鶴』の他『大宴会』にも同じ検印紙が使われていますし、『百鬼園随筆』でも昭和10年以降の版では同図案、色ちがい(茶色)のものが使用されています。
また、『居候匆々』の目次(奥付も同じ)の図案は『北溟』や『随筆新雨』の奥付にも用いられています。百間は桑原会(琴の演奏会)の招待券にも安規の版画を使うほどのパトロンだったので、三笠書房や小山書店に頼んで「風船の繋留索」を補強しようとしたのだと思われます》