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門柱に蝉の殻見る三五日

門柱に蝉の殻見る三五日_b0081843_2151186.jpg

小田久郎『戦後詩壇私史』(新潮社、一九九五年、表紙画=瀧口修造)やっと読了。「私史」という以上に戦後詩壇を史として語ろうとしているところに齟齬がある。引用も煩雑。伊達得夫、森谷均あたりについての記述がもっとも力も入り、興味深い部分ではあるが、徹底的に私史を掘り下げるべきだった。全体的に中途半端。

教えられたのは、吉本隆明の「「四季」派の本質」(『文学』一九五八年四月号)が戦後の四季派否定を決定的にしたということで、小田によればこれは《当時きわめて衝撃的で戦慄的だった》そうだ。偶然だが、先日の『gui』78で奥成氏が

《詩集『風土』は“戦争期”に入ったら「北園克衛のような超モダニストが日本の障子のような風景に美を見出したり」するようになった、と吉本隆明氏等にずっと否定的に指弾されてきていた詩集である》

と書いていることと符号する。北園克衛については小田も冷たい。例えば、昭森社の森谷均が『本の手帖』を創刊したときのレイアウトが北園だった。ところが森谷と北園の感覚が一致せず、

《創刊前には足繁く出入りしていた北園の姿は、創刊号が出たあと、ぷっつりと見かけなくなった。勲章のように残されたのは、趣味的なたたずまいの誌面にそぐわない、北園の描く扉のイラストとデザインだった》p306

と書かれているが、dsでも紹介したように、第二号も構成者は北園克衛である。何号までそうなのかは分からない。架蔵されている方にはご教示をお願いしたい。奥成氏は端的に『詩と思想』(土曜美術社出版販売)二〇〇三年三月号の座談会で、なぜモダニストが攻撃されたか、その理由についてこう発言している。

《戦後の詩のジャーナリズム、つまり「ユリイカ」の清水康雄さんとか「現代詩手帖」の小田久郎さん、「詩学」の嵯峨信之さんとかが単にモダニズムを嫌いだったから——というのが一番分かりやすい具体的な解釈ですね》

『詩学』を長く編集していたのは木原孝一だから、小田、清水とともに、伊達『ユリイカ』にごく近い人々によって排斥されていた四季派でありモダニストだったということになるが、これも変な話ではある。伊達は何しろ書肆ユリイカの最初期に中原中也と稲垣足穂を再刊した男なのだから。



「[書評]のメルマガ」275号につばめさんがこう書いておられる。忘れないように引用しておこう。淀野隆三についてはこれから本格的に追跡したいと思っているので、情報よろしく。

《川端康成全集補巻二の書簡来簡抄に、淀野隆三の長女華子さんがちょくちょく登場します。手紙の内容から、川端夫妻にとても可愛がられた印象がします。川端秀子著『川端康成とともに』203頁の「中野同道とありますが、これは淀野隆三さんの長女(華子さん)のお婿さんの中野四郎さんのことです。ちょうど京都高桐書院の編集の仕事をしておられまして、上京の時にはいつも鎌倉に寄ってくださいました。」との一節からすると、林さんの文にも出てくる高桐書院の編輯者中野四郎と結婚したんですね。》



池上博子さんより『ハンコ通信』7号届く。昨日触れた閏月のことが書かれていた。今年は八月三十日に閏文月七日がもう一度やってくるそうだ(ようするに七月がふた月あるわけ)。願い事を忘れた方はご安心あれ。
by sumus_co | 2006-08-09 22:08 | 淀野隆三関連
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