昨日は二階から柱伝いに一階まで雨が漏った。なんとかしなければマズイと思い、患部(?)を探し出して、その天井と壁のすきまをパテで塞いでいたら、息子から電話があった。四月に引っ越したばかりのアパートがやはり壁に雨がしみ込んでくるという。ロケーションはいいんだが、たしかに家賃は安いよなあ。おたがい。
編集工房ノアより『風の童子の歌 富士正晴詩集』(日沖直也編)届く。大冊だ。六百頁以上ある。巻頭には「芭果山大冊」自筆本のカラー口絵16頁、原稿、雑誌の書影2頁。富士没後初の詩集になり、既発表・未発表詩を網羅してあるという。ノアさんならではの迫力ある一冊。
消息
かなかなは一日だけだった
こおろぎは蚊帳の中まで入ってくる
かまきりが縁をはう
そしてもう燕を見ることもないのだ
春 燕の群りとぶのを見た時
おれの味わった苦い嫌悪の証
うんかを見ず いなごを見ない
そのように燕らも死に果てたのだ
夜の闇の中で、鳥おどしの
しかけ鉄砲が時折鳴る
おれは夜どうし 自殺した女の
似せ伝記を書いている
原稿用紙も尽き果て
インク瓶の底が見え
もとより金は さあ九十円もあったか
おれの精力も底つくわけか
医者があり 精力注射をうち
わけのわからん奴が 金を貸し
三月 九十日
おれは蚊と蛾と夜中つき合った (下略)