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青簾書斎に臓腑のかをりあり
小野先生、ご教示ありがとうございます。編集者も将棋ぐらいは覚えておかないと仕事になりませんね。
内澤旬子さんより新著『センセイの書斎』(幻戯書房、二〇〇六年)をいただく。もし万一いただけなければ、身銭を切って買おうと思っていた本なので嬉しい。 一読三嘆! とにかく面白い。『三省堂ぶっくれっと』『本とコンピュータ』『未來』に連載された内容で、いくつかは初出時に見ていたが、ずらりと揃うと、また別の迫力が出てくる。ペン一本でここまで表現できるという驚きもある。 ウンチクも画家と名乗ってはいるけれど、こういう仕事をやれと言われても、後じさりすると思う。書斎拝見は魅力的だが、それをイラストにまとめるというのは、おそらく特殊な才能・技能にちがいない。 だいたい書斎を巻き尺で計るということができないもの。それでいて定規を使った無味乾燥な線ではなく、へなちょこ(あ、これ、『「本」に恋して』の紹介のときにも使った、たぶんそれが内澤さんの立ち姿というか、スタイルそのものなのだろう。真っ直ぐだけど、ひょろひょろしてる。)に見える手書きラインにこだわっているところがとてもとても心地よい。イラストのレイアウトも絶妙である。人物の表情も利いている。 しか〜も、文章がウマイ! そんじょそこらのライターなど足許にも及ばない。ブログのべらんめい調(?)もいいが、抑制された紹介文も言うこと無し。 収録されたなかでは、小沢信男さん、書肆アクセス、月の輪書林はウンチクも足を踏み入れたことがあるが、なんというか、見事に整理されて表現されているところが、やはり内澤メガネのすごさだと感心する。月の輪さん、そっくり。 そう言えば、本書にも登場している米原万里さんが亡くなった。 《結局私にとって本はモノではない。文字で書かれた内容というものは、本来、形がないものだから、これは仮の姿という感じで……》(p53) と言う発言が記録されているけれど、そのすぐあとにこう続く。 《紙の媒体だと、全然読むつもりのないものがついでにパッと目に入ってくる》 これがモノの本質(情報の多様と重層)ではなかろうか。一見無駄としか思えない存在の広がり。だからこそ本は置き場所に困っても、持っていなければ話にならないのだ。林望氏はこう発言している。 《完璧な図録を出版して、学会にとどめを刺したいと思っているんです。これらの本に関しては日本一のコレクションですよ。こういう研究はやっぱり自分が本を持ってなければだめです》(p13) だめですよねえ。さらに続編を期待したい一冊である。 最後に、べたぼめ、ばかりでもなんなので、一点だけ、静嘉堂文庫のイラストのみ線描が粗いのは何故? 少々見苦しい。 6月17日に内澤旬子・紀田順一郎対談「書斎を見る愉しみ」がジュンク堂書店池袋本店で午後七時より開催される。 また6月6日〜24日は大阪のカロ・ブックショップ・アンド・カフェで「本と書斎の解剖図」展開催。ワークショップとトークショーも予定されている。詳しくはカロさんのサイトにて。その後、根津のカフェNOMADでも6月29日〜7月11日まで開催予定。 造本装幀=工藤強勝+伊藤滋章+渡辺和音 帯のイラストは林望氏、表紙は1が千野栄一氏、4が荻野アンナ氏の書斎。 ![]() 拙作俳句は『センセイの書斎』にひっかけて、書斎は主の内面をさらけ出しているような生々しい感じがつきまとう。ところで、「かをり(薫り)」という旧かな遣いで思い出すのは「シクラメンのかほり」。古語で「かほ」というのは「顔・容」である。《暮れ惑う街の/別れ道には/シクラメンのかほり/むなしくゆれて》とあるので「顔り」のつもりかも(まさか)。ウンチクの大学時代によく流行った。一九七五年である。この曲を聴くと西武国分寺線の鷹ノ台駅前でシクラメンを売っていた情景がまざまざと甦る。
by sumus_co
| 2006-05-30 21:04
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