高橋輝次さんの『関西古本探検』(右文書院)が明日あたり書店に並ぶようである。ぜひごらんいただきたい。
「早稲田古本村通信」103号の連載『「蟲文庫の「めくるめく固着生活」』二回目「こころと背骨の文庫本」。志多三郎『街の古本屋入門』について。志多三郎こと横浜・一艸堂石田書店の石田友三氏との出会いなどについて。蟲さんを見ていると、小山清「落穂拾い」に出てくる古本屋の少女を連想する、というのが石田氏の感想だったそうだ。
《紫色の細いバンドで髪を押へてゐるのが、化粧をしない生まじめな顔によく映つて、それが彼女の場合は素朴な髪飾りのやうにも見える。おそらく快楽好きな若者の目には器量よしには映るまい。自転車に跨つてゐる彼女の姿は宛然働きものゝ娘さんを一枚の絵にしたやうだ》
《僕はまた彼女の店の顧客でもある。主として均一本の。僕はまだ彼女の店で一度に五拾円以上の買物をしたことはない。僕が初めて、彼女と近づきになつたのも、均一本の中に「聖フランシスの小さな花」と「キリストのまねび」を見つけたときだ。彼女は「小さな花」の奥付がとれてゐるのを見て、拾円値引をしてくれて、二冊で五拾円にしてくれた。僕はいまの人が忘れて顧みないやうな本をくりかへし読むのが好きだ。僕はときどき彼女の店に均一本を漁りに行くやうになり、そのうち彼女と話すやうにもなつた》
『落穂拾ひ』(筑摩書房、一九五三年)より。三十円均一ということか。この後、少女は作者の誕生日にささやかなプレゼントをしてくれる。そして画家のミレーと同じ誕生日だということを教えてくれるのである。それは十月四日だった(てんびん座。ちなみに、この星座の物書きはみんな原稿が遅いのである、経験者かたる)。
『ARE』10号の大崎節子による小山清年譜には《清は昔からいい本を安く探す名人だった》と書かれている。また昭和二十八年に生まれた長女は美穂、三十年に生まれた長男の名前は穂太郎である。