井筒俊彦『イスラーム思想史』(中公文庫、一九九一年)を読み始める。じつに面白い。アラビア人(セム人)は眼と耳が良いことを第一とするそうである。だからコーランは朗唱を聴くとすばらしい。響きの陶酔的な美しさがある。
また、彼等は目に見えるものしか信じないので、神は神である証拠を具体的な奇跡という形で示さなければならなかった。例えば、次々に奇跡を求めるユダヤ人にはイエスも辟易して、悪口を言っている。たしかに旧約聖書では神が目に見えるように描かれている。
というところで『星の王子さま』の狐のセリフを思い出した。哲学的な狐は小さな王子にこう言う。
大事なものは目には見えないんだ。
L'essentiel est invisible pour les yeux.
まあ、これはなくなって初めてその大事さが分かる、という意味で言っているのだが、この対照は考えさせられるものがある。