『四声解環』に詳しいコメントをくださったMakinoさんより御著作『廣韻反切圖表稿』『廣韻反切圖表稿附属常用漢字』の二冊(二〇〇七年)、および「中国の言語と文字」(『広漢和辞典』索引より)を頂戴した。中国語に熟達しておられるとはお見受けしていたが、韻学がご専門だったのだろうか(違いました)。何しろ韻にはまったく疎いもので、チンプンカンプンながら、解説文を読みつつ、漢字の音韻について基本的知識をお茶漬けのようにかき込んだ次第。おぼろげにしか理解していなかったものがかなりクッキリとしてきたのは確かだが、これを極めるには一生涯あっても足りない。
内容は文字通り『廣韻』の「反切」を「圖表」にした稿ということである?! ご本人に解説していただくのがいちばんだろうが、一応最初の頁を掲げておく。「廣韻」(こういん)は中国で十一世紀の初めに成立した韻書。巻首の記載によれば26194字を収め,注解の文字191692個に至るという。
最初の「歌」の列の「歌」のところは「古俄 歌 ge」となっているが、この「古俄」が要するに「反切」(別の漢字の子音・母音によってある漢字の音を表すこと)である。古(gu)+俄(エ、e)=ゲ(ge 歌)[アクセント記号は略]。
漢典/哥的解释|哥的意思|汉典“哥”字的基本解释
http://www.zdic.net/z/16/js/54E5.htm
これらをどう使えばいいのか、使わなくてもいいのか、はよく分からないけれども、とにかくたいへんなものである。深謝。
頂戴して思い出した。そう言えば、買ったまま何年間も放置してある字書があった。それは『新刋校正増補円機詩韻活法全書』(積徳堂、延宝癸丑=一六七三年)七冊十四巻。明代の作詩用の辞書を日本で版刻したもので、早稲田大学には
坪内逍遥旧蔵『新刋校正増補円機詩韻活法全書』が所蔵されている。パッと見たところ同じような版面だが、早稲田本の版元は京都の八尾友春(出版年不明)だとか。漢字の意味や用法を平仄によって分類してある。だから漢詩を作る時にはたいへん便利である。ただし、これも通しの索引がないため、四声の別を知らない漢字ははじめから探さないといけない。なるほど、だからこそ『四声解環』の和訓で引けるという機能が便利だった、と、そういうわけだろう。
この字書で下平声の五歌を披いて見ると、「歌」の反切は「岡何」(gang+he)となっている。歌と同じ列の「多」も「得何」ではなく「當羅」。『廣韻』は中古音だから明代と表記が違って当たり前なのだろう(素人考えです)。
蛇足ながら、この字書は百円均一から拾い出した。