
多田進さんより伊丹十三『ヨーロッパ退屈日記』(新潮文庫、二〇一二年版)の多田さんカバー・ヴァージョンが届く。む、ふっふっふっ。いいですねえ。多田さんらしいシンプルな文字配り。写真が生きている。
これは「
旅の本屋のまどが選ぶ「本と(ふた)旅」」のために多田さんが制作された期間限定ブックカバー。

写真は誰あろう小生の撮影である。期間限定とは言え、自分で装幀した本以外で「カバー写真 林哲夫」とクレジットが入るのは初めてのこと。画とはまたちがった嬉しさがあるというもの。ちなみにオリジナルはこちら伊丹十三のイラストおよび装幀(本文挿絵も)。多才な人だった。

元版は一時期架蔵していたが、売り払って久しい。今、ちょいと拾い読みしてみる。洒落た文章家だ。
《どうしてパリはこんなに奇麗なんだろう。緑と、黒と、茶色と、グレイ、それに少量のオレンジやコバルトや黄色のある町。人々は、グレイや黒やいろんな茶色の革なんかを着て歩いているねえ。あれは、街にあわせてるんだ。連中は、街を上等の外套みたいに着こんでいるんだ。
どうしてパリはあんなにうまくいってるんだろう。どうして東京はあんなに駄目なんだろう。日本人っていうのは駄目な種族なのかね。》
伊丹の知るパリよりも現在のパリはずっと明るくなっているだろう。上等の外套、伊丹のイメージは黒っぽいグレイか。今のパリは街全体が白っぽい灰色あるいはベージュ色になってしまい、なんだか軽くて物足りない感じだ。一九七六年と七九年に滞在した頃の暗澹たるパリが懐かしい。
「
旅の本屋のまどが選ぶ「本と(ふた)旅」」
