マドレーヌ広場のそばにあるピナコテック・ド・パリ(パリ絵画館 La Pinacothèque de Paris)でタマラ・ド・レンピッカ展を見た。かなり久し振り(梅田の大丸で見た記憶がある、大丸は一時期いい展覧会をやっていた、大阪駅に近くて良かったのだが)。いわゆるアール・デコの時代(一九二五年から三五年)の仕事は今見ても十分鑑賞に耐えるものだ。基本は古典的な捉え方。それをデコふうというかキュビスム風に味付けしているところに新味があり、流行が去るとともに忘れられ、そしてまた再評価されている、といったような感じなのだが、一九三〇年前後はとくに充実した仕事をしているので評価は当然と言えば当然であろう。
ピナコテック・ド・パリは二〇〇三年に設立。マドレーヌ広場二十八番地(フォションの倉庫だった建物)へ移転したのが二〇〇七年、さらに二〇一一年にはヴィニョン通りの建物(二十八番地の斜め向かい)を展示場として確保した。上の写真がヴィニョン通りの別館で、ここには美術書を中心とした書店もある。
書店の飾窓。タマラの画集が並んでいる。竹の装飾に注目。
館長はマルク・レステリーニ(Marc Restellini)で、まだ四十代のやり手美術史家、キュレーターだ。彼はかつて東武百貨店のためにモディリアーニやルオーなどの展覧会を何度も企画している。たぶん今でも日本の美術館などとは関係が深いのだろう。
マルクは「儲かる展覧会」を標榜しているらしい。ピナコテック・ド・パリはその主張の実現の場であって、ある意味、これはフランス流ではなく日本流、とくにかつての華々しかった百貨店美術館流の人を呼ぶ手法ではないだろうか。その証拠に(なるかどうか)これまでのピナコテックでの展覧会は……リキテンシュタイン、スーチン、マン・レイ、ルオー、ポロック、バラドンとユトリロ、ムンク、ロマノフ王朝、ゴッホと広重……、どうだろう、百貨店ラインナップだと見てまず間違いないと思う。百貨店の美術展はいろいろと非難を浴びたこともあったようだが、このような形でパリに根付くとは想像できなかった。
タマラもアール・ヌーヴォの女性たちという本館での展示とセットになっている。タマラだけ見たい人は12ユーロ、両方通し券は18ユーロ。小生は、ミュシャなどはまあここで見なくてもいいかと思って(しかもそちらは行列ができてる)、タマラだけにした。タマラの入場者はそう多くはなかったものの、少ないというわけでもない。マドレーヌ広場周辺は外国人観光客も集まるところだし、有名ブティックが軒を連ねている。そういう場所で絵を見せる、この立地の選び方も日本の百貨店流に学んだものかもしれない。