岡崎武志『昭和三十年代の匂い』(学研新書、二〇〇八年)がちくま文庫(二〇一三年五月一〇日、カバーデザイン=倉地亜紀子)に入った。くり返し衣を替えて登場する、こういうのは嬉しいですねえ。むろん増補もされているし岡田斗司夫氏との対談も収められている。
《岡崎 そこで、昭和三十年代について考える時に、かねがね謎に思っていることがある。というのは、岡田さんは一九五八年生まれでしょう。みうらじゅん、坪内祐三、唐沢俊一、喜国雅彦、久住昌之、沼田元気。これが一九五八年ですね。そのあと、僕が五七年で、友人で古い絵葉書なんかを研究している生田誠が同じ五七年。高校の同級生で、京都で「善行堂」という古書店を経営している山本善や泉麻人さんが五六年。ぼく、三月の早生まれでして、五六年生まれとも重なる。どうも、この年代に昔のことを懐かしがって文章を書いたり、古本が好きだとかいう連中が集まっている。》
《岡田 僕より三つ下で庵野秀明(アニメ映画監督)っていうのがいますけども、彼は「もう完全に僕らはテレビっ子だから教養がないんですよ」っていうふうに言い切っているんです。つまり、われわれよりちょっと上の、本しかなかった人と、テレビもあった人は、もう根本的に人種が違うと。すべての物をテレビを通じて見たりするようになったのが、いま挙げられた昭和三十年代前半生まれ、じゃないですか。》
たしかにテレビは大きな要素であろう。補足として岡田氏は昭和三十年代ロストゼネレーション理論を開陳しておられるが、それは本書で直接読んでいいただきたい。昭和三十年代の匂い、たまらんぜよ。