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標本の本

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村松美賀子・伊藤存『標本の本 京都大学総合博物館の収蔵室から』(青幻舎、二〇一三年三月三〇日)。

メリーゴーランドは本屋さんである。子供の本屋さんと謳っていながら、大人の本もセレクトして置いてある。美術や文学の本も、かなり偏ってはいるが、納得できる品揃えになっている。個展の期間中、毎日、そのメリゴの棚を眺め回していた。あれも欲しい、これもいいな、と目移りすること甚だしく、ふんぎりがつかなかった。大人買いしろよ! と自分を励ます声も聞こえたのだが、耳が遠くなったふりをしてグッと我慢した。結局、迷いに迷った末に買ったのがこの『標本の本』(他にムナーリとシュヴァンクマイエルとコーネルの候補があったのだが)。

京都大学総合博物館には京都大学が創立以来百年以上にわたって蒐集してきた約二百六十万点の学術標本や教育資料が揃っている。以下、序の文章(村松美賀子・伊藤存)より。

《何より圧倒されるのは地下の収蔵室だ。あまりに驚くものやことばかりで、「わぁ」「へぇ」「すごい」くらいしか言葉が出てこなくなってしまう。
 広大な空間は4室に分かれ、それぞれが二層構造となっている。第1室は魚類やは虫類など、第2室が鉱物・岩石や化石など、第3室が植物や昆虫など、第4室がほ乳類などで、それぞれ体感温度も湿度も、そして匂いもまったく違う。ちなみに、研究者が研究や教育目的で使う場所だから、一般には公開されていない。》

《最初に収蔵室へ入って感じた驚きや好奇心から始まった、生命をめぐる旅でもある。》

京都にも秘密(?)のヴンダーカンマー(不思議の部屋)があったのだ。

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後書きに相当する文章で館長の大野照文氏が書いておられる。

《すでに数万年前にはネアンデルタール人がその地域からは産出しない巻き貝やサンゴの化石を、また3万年ほど前にはクロマニヨン人がアンモナイトや二枚貝を持っていたことが遺跡の発掘から知られています。
 こうして始まった収集の行為は、やがて博物館へとつながっていきます。》

集める生き物、それが人間だ! 

それにしても、標本というのはスタティック、動かない、静かなもの、言わば生命の抜け殻である。しかし、その抜け殻はある意味たいへん饒舌に語りかけてくる。それは美術やひょっとして文学と言われる記号の羅列にたいへん似ている、いや、まったく同じ作用なのかもしれない。

生きたもののコレクションがあまりに無惨(動物園がどうしても好きになれないのだ)のに反して、これら死んだオブジェの見事さはいったいどこからくるのだろうか、そう考えていくと、このような結論にたどり着く。

結局、死んだものだけが美しい。

標本の本_b0081843_20522514.jpg

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