
高野純子『フランスのオトグラフ』(京都書院、一九九八年一一年一五日)を画廊に来てくださった方より頂戴した(お礼申し上げます)。アーツコレクションのシリーズでこんな本が出ているとは知らなかった。オトグラフは autographe で自筆もの(原稿や書簡など)のこと。ヴォルテールからラヴェルまで歴史に残る主に文筆家・画家三十五人の筆蹟がフルカラーで展開されている。豪華版の古書目録だとよく見かけるが、こういう単行本(文庫サイズ)では珍しい内容ではないかと思う。
プルーストのジャック・ブーランジュ宛書簡(1921年11月6日)なども出ているけれど、おお、と思ったのはヴェルレーヌがベルギーのモンス刑務所で書いたというこの詩稿(カリカチュア入り)。一八七三年〜五年頃。ブリュッセルでランボーを銃撃してケガをさせたことによって収監されていた。

Hélas! Je fu jadis un faune
Qu'en Belgique on prétend pas bien aphone
Et bien (demanderait)pas trop mieux
Qu'un trône
自画像のフキダシには「Je veux vivre! (生きたい!)」と。

こちらはセザンヌの手紙。こんな字を書くとは思わなかった。

アルベール・カミュの手紙。クセがあって慣れないと読み難い筆蹟である。
本書の表紙はジャン・コクトーによる自著『ルノーとアルミッド』(ガリマール、一九四三年)のジョルジュ・イジドリ宛献呈署名挿絵。