
池田四郎次郎編輯『鼇頭註釈文章軌範纂語字類』(岡本明玉堂、一八九一年)。全四冊のうちの一。題簽では池田四郎二郎となっているが四郎次郎が正しいようだ。蘆洲(1864-1933)と号した。大阪で生まれ明治二十一年に上京して二松学舎の三島中洲に漢学を学んだ。序によれば本書は明治十八年に擱筆したもようだから、上京以前、二十四歳の著作ということになる。大阪での師匠は坂本葵園と近藤元粋だったらしい。

見返しと扉もすごいが、口絵がまた迫力である。すべてエッチングによる印刷である。ヨーロッパにはデューラーをはじめとして細密な銅版画の流れがあるが、この明治時代の一時期に特有の日本銅板画のなんとも不思議なミスマッチな感覚には独特の魅力があふれている。これらの銅版挿絵本をコレクションアイテムとしておられる先達も何人か存じ上げている。とにかくキッチュすぎて美術史からは無視されてきたわけだが、そろそろ再評価されてもいいころだ。

明治本の入った段ボール箱をひっくり返しているとたまたま現われたので紹介してみた。銅版本は何冊か持っている。ただ、ここまでビッシリと描かれているのは他にないと思う。芳洲画という落款があるが、誰だろうか?