
『香川新報』大正十四年二月二十二日号。郷里の古家を清掃中に発見したもの。古い箪笥の抽き出しに敷かれていた。長らく祖母および母の着物がしまわれていたので黄変しているほかには破れもほとんどなかった(画像はモノクロ複写)。裏表一枚だけ。他にもあったかもしれないが、気付かず捨ててしまった。うかつだった。
トップニュースは「墓地参道/新設反対陳情書/宮脇町有志連署にて」。高松市宮脇町の姥が池墓地の参道建設に反対の住民が市長ならびに市会に陳情書を提出したという内容。陳情書の全文が掲載されている。それによれば岩清尾神社の景致を乱す姥が池墓地と伝染病院(現・高松市民病院)は即時移転せよ、道路整備などもってのほか、という要旨である。
他にも交通事故などが報道されているが、いたってのんびりしたものである。なかでは「松島町の賭博/女髪結ひの/宅での花合せ」の記事が実況中継のようで面白い。
《高松市松島町農泉谷虎吉(五八)青物商玉井弥吉(六一)安藤正一(二七)日稼ぎ古川ヒサ(四三)の四名が十九日午後三時頃同町女髪古川コウ方奥六畳の間で花合せ賭博に耽つてゐるところを巡回中の渡邊巡査が取押へ二十日検事局へ送つたが例によつて付近の者数十名が「貰ひ」と称し義理と付き合で一日の仕事を棒にふり裁判所構内をウヨウヨしてゐるので道行く人の視聴を集めてゐた》
しかし何と言っても注目は広告。「古本高価買入/新刊速着/高松市四番丁東ノ丁/上田書店」。

以前紹介した多田昭さんの労作『香川県の古書店の歴史』にも上田書店の名前は出ているが、それは昭和八年版『古本年鑑』の記述で《上田書店 高松南新町》としてある。また《入手した資料の最も古いものが大正末期、高松市片原町に徳田書店があったことは古い市街図等でわかっている》ということなので、この『香川新報』の広告は最も古い資料の部類に入るだろう。
香川県の古書店の歴史
http://sumus.exblog.jp/15352307/
もうひとつ、連載小説(講談)双龍斎貞円講演「甲信怪狐伝」(47)の挿絵が責め絵で知られる伊藤晴雨というのも見っけもの。

この回だけではよく分らないが、武田の落人が白狐に助けられるというストーリーらしい。白狐が赤飯を持ってきてくれる。ところがかなり歩いたはずなのに同じ場所に戻っていた。すると稲荷神社の前に早桶が置いてある。そこへ今度は狼が現われた。狼は早桶に手をかけて破りはじめた(というところが挿絵の場面)。のんきなことに図版が上下逆転して印刷されている。

さすが伊藤晴雨と思わせられる筆致ではないか。大掃除もたまにはするものである。