
『藤田嗣治と愛書都市パリ 花ひらく挿絵本の世界』(キュレイターズ、二〇一二年、デザイン=キュレイターズ)を恵投いただいた。年末に嬉しい頂き物。本展は林洋子『藤田嗣治 本のしごと』をベースに企画されたもののようだ。
藤田嗣治と愛書都市パリ
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林洋子『藤田嗣治 本のしごと』
http://sumus.exblog.jp/15912195/
藤田の未亡人、君代さんの遺品のなかに約五百冊の書籍があったという。七割程度はフジタの旧蔵書である。
《自覚的に残されたもので、二種の傾向を見せる。ひとつは藤田が装幀や挿絵に関わったもの、もうひとつは制作用の資料として集めた書籍である。これらは夫人の最晩年に、東京国立近代美術館のアートライブラリーに一括して寄贈された。その概要については2011年の拙書『藤田嗣治 本のしごと』で紹介したが、今回の展覧会はその後者、挿絵本関連の大半をまとめて披露する初めての機会となる。》(林洋子「本を読む、本を装う」)
上の図は小牧近江『Quelques poèmes』(LA BELLE ÉDITION, 1919)より、おセンチな詩の一節。フジタにとっては最初の挿絵本である。この少女の絵はそのまま阪本越郎『暮春詩集』(金星堂、一九三四年)に流用されている。
ジュール・ボワシエール『Propos d'un intoxiqué』(JAVAL & BOURDEAUX, 1929)、石版画挿絵十六点、限定九十七部。
ラビンドラナート・タゴール『Amal et la lettre du roi』(LUCIAN VOGEL, 1922) 、木版画七点、限定百四十二部。
フジタは『芭蕉とその弟子のハイカイ Haïkaï de Bashô et des ses disciples』(国際文化振興会、一九三九年)に四点の挿絵を提供しているが、そのなかには芭蕉の「古池や蛙飛びこむ水の音」を視覚化した絵もある。常識的に一匹のカエルが池にジャンプしている図(じつは複数のカエルかもしれないという説は以前紹介した)。フランス語訳はこうなっている。
Ah! le vieil étang!
et quand une grenouille plonge,
le bruit que fait l'eau!
母音の数を五七五に揃えてあるところが苦心の翻訳。当然ながらここでも一匹のカエル(une grenouille)である。
フランス語の俳句について
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古池や蛙とひこむ水の音
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