
『東京 ローズ・セラヴィーー瀧口修造とマルセル・デュシャン』(慶應義塾大学アート・センター、二〇一二年、デザイン=川村格夫)展図録を頂戴した。深謝です。展覧会は十二月三日から二十二日まで
慶應義塾大学アート・センターで開催されていた。
図録のカバーはトレッシングペーパー。一皮むくと白い清潔な表紙が現れる。

瀧口は一九五八年にスペインのポルト・リガトへダリを訪ねて行き、ちょうど来合わせていたデュシャンに紹介された。翌年から文通が始まり、デュシャンが急死する一九六八年まで続いたそうだ。瀧口はこの交渉のなかで「ローズ・セラヴィ」と名付けたオブジェの店を開くことをデュシャンに提案し、看板用に「Rrose Sélavy」という署名をもらっている。そのサインを銅板に鋳造したものが作られ瀧口の書斎に置かれた(店は実現しなかった)。
ローズ・セラヴィ(Rrose Sélavy)という名前の由来は、デュシャンが別人格になりたいと思ってユダヤ人の名前を探していたが、どうもぴったりくるものがなかった、そんなときにひらめいたのが、性別も変えればいいじゃないかということで、ローズ・セラヴィ(Rose Sélavy)を思いつき、さらに LLoyd のように語頭の文字を重ねることにした、のだそうだ(Michel Sanouillet『Duchamp du signe』でデュシャン自身がそう語っている)。
とにかくダジャレ大好きなデュシャンと瀧口修造は大いに意気投合したようである。瀧口はデュシャンの駄洒落をなんとか日本語に置き換えようと努力した。その成果が『マルセル・デュシャン語録』(東京ローズ・セラヴィ、一九六八年)となる。そのなかで
『Rrose Sélavy』(publié par GLM dans la collection "Biens Nouveaux" le 19 avril 1939 à 515 exemplaires numérotés)から訳したこの一文は傑作だ。
Poils et coups de pieds
en tous genres
アラユル種類ノ
足蹴ヤ足毛
訳文は瀧口の手帖から。語録では《あらゆる型の/足毛と足蹴》。poil は頭髪とまつげ以外の体毛を指すが、足毛はうまい(!)

「東京ローズ」はもちろん洒落になっているのだろう。