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鹿田松雲堂五代のあゆみ![]() 『なにわ古書肆 鹿田松雲堂五代のあゆみ』(上方文庫39、和泉書院、二〇一二年一一月二五日)を頂戴した。本ブログでも鹿田松雲堂については散発的ながら何度か取り上げている。 『古典 松雲堂月報』第三冊 http://sumus.exblog.jp/14307926/ 鹿田静七書簡 http://sumus.exblog.jp/18965058/ 巻頭に、肥田晧三さんが、というのもしっくりこないので、肥田せんせいが、としておこう、「鹿田松雲堂と私」と題して懐旧談を載せておられる。なんともいい話。肥田せんせいの目配りの幅広さはこのようにして胚胎されたのである。 《昭和三十六年の秋、私の三十一歳の時である。『日本古書通信』の大阪の中央堂書店の出品目録に鹿田松雲堂の『書籍月報』と『古典聚目』合計百四十冊が載つた。『書籍月報』は明治二十三年に第一号を出し、以後、古書籍の通信販売目録として続刊、明治四十二年『古典聚目』と改題、昭和十八年二月まで全部で百五十六冊に及ぶ、この業界で最も重んぜられる書目である。》 《私は和本のことをもつと深く知りたく、どうしてもこれを手に入れたいと思つたのだが、なにぶん高価で、貧乏書生にとつてはたやすからざる事態である。でも、江戸時代にどのような書物がどれ位刊行されているのか、この目録の全冊に眼をとおしたら、その流れが手取り早く勉強できるのではと直感、かならず大きな教示をうけるにちがいないと確信して、無理をして入手したのである。折から長い病床生活の最中で自分に出来ることは読書だけ、たつぷりある時間を熱中して毎日のように目録を見ることを続けた。好きな作者の著述、大阪先賢の人たちの著述、刊本、写本、自筆稿本、その書名をノートに摘記する。たちまちノートが積み上るたのしい作業。書名を覚えて中味を知らぬ変則なことで、こんなのが"外題学問"とでもいうのか、しかし無一物の私にとつてこの時の勉強は生涯の最も大きな収穫になつた。当時を回想するにつけ、鹿田松雲堂代々の遺産からうけた量り知れぬ恩恵に、感謝の思いが一杯である。》 ![]() 巻頭口絵写真「大塩平八郎市中施行券引札」。大塩平八郎が米価の高騰を見兼ねて自らの蔵書を売り払って得た金子を困窮している家々へ分配した、その引き換え札。初代鹿田清七はここに名前の出ている旧主家の河内屋新次郎より引き渡し済み券を多数貰い受けていたという。 幸田成友『大塩平八郎』(中公文庫、一九七七年)に《第二は施行札である。この実物は今の鹿田静七から自分に贈られたもので、縦九寸二分、横四寸五分、すなわち美濃判三ツ切である》云々とあるように、明治時代になっても残部があったようだ。幸田によれば大塩平八郎の蔵書は以下のようなものである。 《挙兵前に所有の書籍を鬻[ひさ]いで貧民に壱朱宛を施し、その金額総計六百両に上ったといえば、多数の蔵書があったわけであるが、その大部分は兵庫県西出町の家持柴屋長太夫が金を出したものらしく、天保三年同人入門以来同八年正月に至までに、書籍代金として金二百両銀十二貫六百目余を貢いだとある。》 《本箱は玄関から講堂、書斎へかけて、二、三段に積み上げ、土蔵中には一切経もあった。》 《一万軒に金一朱宛を施すといえば、総計六百二十両余となる算当だから、珍本奇籍が必ず多くあったろうと思うが、売払いが突嗟のためか、目録が残って居らぬ。》 なお『鹿田松雲堂五代のあゆみ』の口絵解説では《獲得資金七百五十両》とされている。また幸田が『書籍月報』第六九号(明治三十八年十一月二十七日)に寄せた「鹿田静七翁小伝」も収録されており、それはこう結ばれている。 《去夏翁疾を獲しや、一切の店務を令嗣伸四郎君に譲り、優遊自適し、殆ど世事を省みざりしかど、親戚故旧に対する情誼は愈々厚く、又自ら往事を追懐して思ひ出の記一篇を作れり、(本伝は主として之に因る)翁今春再び起つべからざるを知り、口占して曰く、 合点して嵐待つ間のさくら哉 五月雨やさてもきまつて降るものを 是歳八月十三日竟に逝く、越えて二日長柄に荼毘に附し、骨を春陽軒に葬る、大阪及び近畿の諸名流多く其葬に会せり、享年六十、自ら諡して釈古丼といふ、 明治三十八年十一月 辱知 幸田成友記》 蛇足ながら文中「長柄」は明治九年操業を開始した火葬場・長柄葬儀所(現・北斎場)。「春陽軒」は大阪天王寺にある曹洞宗の寺。
by sumus_co
| 2012-11-29 21:51
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