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加賀千代女の短冊某古書店の目録から加賀千代女の短冊として購入した。しかしネット検索してみると、この俳句は千代女の作ではないらしい。 起て見川寝て見津 千代 蚊屋の広さ可那 ネットでは論拠や出典がはっきりしなかったので図書館で調べなくてはと思いつつ日が過ぎた。数日前、ふと部屋の隅に重ねた本に目をやると、なんと『貞心と千代と蓮月』という背のタイトルが飛び込んで来た。相馬御風の著書で春秋社、昭和五年刊である。あらら、こんな本買った覚えもなかった。 覚えはなくともこれは有り難い。よくぞ買っておいた(自分をほめてやりたいというやつです)。さっそく千代の章を読み流す。ありました。少し長くなるが、該当箇所を引用しておく。 《更に又千代の傑作として昔から弘く知られて来た 起きて見つねて見つ蚊帳の広さかな の句が、全然別人の作であることの証明された如き、それは千代自身の全然与り知らぬ後人の付会であるにしても、やはり何となく一種の不快感を抱かずにはゐられないことである。尤も、さうしたことを知らなかつた以前にあつても、私は「渋かろか……」の句が、結婚に際して千代女のその夫たるべき人に贈つて句であるといふことについて、やはり一種の不快な感じを千代女その人に対して抱いて来たのである。 それはなぜかといふと、いかに町家に生れたとはいへ、苟も純潔な生娘である以上、嫁入した早々夫たるべき男に向つて、 渋かろか知らねど柿の初ちぎり といふやうな、人によつては甚だしい猥褻味をさへ感じさせるやうなさうした文句を臆面もなく発し得るといふことは、さばけてゐるとか、あつさりしてゐるとかいふ以上に、幾分のいやらしさをさへ感じさせる事柄だからである。》 《ところで、其の千代が夫に死別した後の悲みを詠じたといひ伝へられて来た 起きて見つねて見つ蚊帳の広さかな の句であるが、それが一体どうして千代の作として誤り伝へられるに至つたものであらうか、その事はよくわからぬが、川柳子からさへ、 お千代さん蚊帳が広けれや這入らうか とまで揶揄されたといふほどに、此の句には亡き夫を偲ぶ句としては、あまりに卑俗な肉感味のあることは争はれない。而もかうした肉感的な句が、古来一方に高い貞操の権化の如く崇められ模範的な寡婦生活を送つた女聖の如く讃美されて来た其の人の作と見なされて少しも怪しまれなかつたといふことは、甚だ奇怪な事といはねばならぬ。 此の「起きて見つ寝て見つ……」の句が、全然別人の作であることは、元禄七年京の井筒屋から出版された「其便[そのたより]」と題された句集によつて明らかである。これは長崎の俳人泥足の撰に成るものである。その中に、遊女浮橋といふものゝ作として 物おもふ比 起きて見つ寝て見つ蚊帳の広さ哉 かう明らかに載つてゐる。元禄七年は千代の生れた元禄十五年から見れば、九年前である。その頃生まれても居ない千代の句が誤つてその中へまぎれ込むわけがない。 私は此の句の作者が遊女であると知つて、それで初めてその真の味はひがわかつたやうに思つた。「いかにも!」と膝を打たずにゐられなかつた。》 要するに短冊は贋物である。ただ時代はそれなりに古いと思われるので、たぶん幕末あたりかもしれないが、川柳どころか短冊まで流布していたわけだ。千代の人気のほどがうかがえるし、この句もよほど人口に膾炙していたと見える。 ああ、それにしてもこの本を先に読んでたらなあ……。安いと思って引っかかったわけで、こういうのを「授業料」というのだろう。まあ目録に載せた古本屋さんも知らなかったということで、痛み分けですな(意味わからん、口惜しまぎれ)。 『貞心と千代と蓮月』の口絵写真より。「百生[ももなり]やつるひとすしの心よ李[り]」。手もまったく違う。 相馬御風によれば千代は安永四(一七七五)年九月八日に《四年もの永い老衰の床に就いてゐた後》に 月も見てわれは此世をかしくかな という辞世の句を残して静かに息を引き取った。これも全く偶然なのだが、『几菫全集』(ほとゝぎす発行所、一九〇〇年)をめくっていると、千代死去の知らせが届いたということが出ているのにぶつかった。雁は手紙を意味する。 《 加賀の千代尼身まかりしと息 白鳥よりせうそこせしかは 来る雁にはかなきことを聞夜かな》
by sumus_co
| 2012-11-08 21:12
| 古書日録
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