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書店の棚 本の気配

書店の棚 本の気配_b0081843_2022168.jpg

佐野衛『書店の棚 本の気配』(亜紀書房、二〇一二年九月二八日、装丁・レイアウト=矢萩多聞、装画=得地直美)読了。佐野さんは東京堂書店神田神保町店の元店長。小生もたいへんお世話になった。トークショーこそやらせていただく機会はなかったものの同書店の上階で佐野さん自らが差し出してくださる拙著何十冊かにサインした記憶がある。その折に少しだけ雑談させていただいたが、さすが、なかなか、自らのスタイルと思想をきっちりと持っておられる方だと思った。そのエッセンスがこの一冊に詰まっている、そう言っていいだろう。

いちばん印象に残るのは、理想の書店、棚の並びに対する特別な思いである。

《書店にとって理想的なのは、本が本をよび、本が棚をよび、棚が棚をよび、棚が書店をよぶという構成を作り上げることだ。読者にとってはその逆をたどればいい。書店に入って棚から棚を見ながら本を手にとり、その本がまた本をよぶ。限りない世界が身近な空間に出現する。
 ところが、書店員のなかには、自分の思いだけで本を選び、それが独自の棚作りということになっているケースが多いようだ。これは、その人の思いの先走りだと思う。独りよがりの配列をしてはいけない。》

《それぞれの本の立場に立ってみたときに、その本の存在が素直に自分の意識を呼び覚ましてくれる。単なる紙の集積としての物体を、自分の手で動かせるからといって侮ってはいけない。それらは人類の始まりからの記憶として連綿と伝えられてきたものである。本というものはそうした伝統を背負って伝えられ、現在でもその末裔として続いている人間の知的な営みなのである。》

書棚の配列に人類の壮大な歴史を投影するとは! たしかにその通りかもしれないが、そんな棚を作るのは容易なことではなかろう。

《理想的なのは、研究者が書籍の棚のレイアウトをすることだと思う。要するに書店では書籍配列のレイアウトが作れないのである。現代では、学問はすでに越境的であり、相互にオーバーラップしている。単なるジャンルの配列だけでは逆にコンテクストが分断されてしまうのである。棚を見ている読者からすれば、配列の流れが見えない。類似本をまとめてみたり、同じ著者の本を一堂に展開するといった棚の配列は逆に違和感を伴う。書店人はここがよく読めない。》

なるほど、こういう配置はおそらく本を読むだけではなく本を書こうとする人の好む傾向かもしれない。佐野さんには著書も多く、たしか小生も一冊頂戴した。

《山口昌男さん来店。いつものように棚の本をじっくり見て回る。気に入られるような本を並べておいただろうかと心配になるのである。山口昌男さんと立花隆さんが来店し、本を抜かれるといつも専門書の新刊の棚がガタガタになるのだった。こういうときは書店員としてとても嬉しい。》

そういう買い方、一度くらいはやってみたいものだ。

そうそう、こんなことを書いては怒られるかもしれないが、佐野さんがいると必ず値引きしてくれた。新刊書店ではほぼ考えられないことである(古本屋なら親しくなると少しはおまけしてくれる店主も多い)。値引きももちろん嬉しいけれど、そういうファミリー扱いを得難いものだと思った。ただレジの作業は煩雑になるようなので、なるべく佐野さんに見つからないように本を買ったりしたこともある。開店時間にたまたま通りかかって入口のところで佐野さんと顔を合わせたことがあった。一年に一度か二度しか神保町には出向かないのに毎日会っているような顔で「やあ、おはよう」と挨拶してくれたのには驚いた。

坪内さん(たぶん登場回数最多)や荒川洋治さんはもちろん黒岩比佐子さんも畠中理恵子さんも(畠中さん、今はまた地方・小で働いておられるそうです)みずのわ出版も登場している。深遠でありながら明快で、さらに気配りのある、佐野さんそのままの好著。

亜紀書房
http://www.akishobo.com
by sumus_co | 2012-11-06 20:15 | おすすめ本棚
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