
マンディアルグ『薔薇の回廊』(松本完治訳、エディション・イレーヌ、二〇一二年一〇月二〇日、造本=アトリエ空中線・間奈美子、挿画=山下陽子)。
カルパントラ(Carpentras、南仏ヴォクリューズ県の町)からパリへやってきた高校生のフローラ・ファーニュはメトロの切符一枚でパリ中を巡ろうと思いつき《薔薇色の薄っぺらい綿のワンピースを身につけているだけで、それも洗いざらして縮んでいるせいで、体の線がくっきりと露わになり、下着の黒いブラジャーやパンティが透けて見える》という出で立ちでオペラ駅のエスカレーターを下って行く。一巡りしてたどり着いたシャトレ駅の動く歩道で日本人の男達に取り囲まれて……。ちょっと劇画タッチの短篇で楽しめる。松本氏による解説も三島や谷崎に心酔していたマンディアルグの側面を伝えて読み応えあり。
原題は「Le Tapis Roulant」。「動く歩道」という意味(直訳すれば「転がるじゅうたん」? 他に健康器具の「ウォーキングマシーン」をも指す)。シャトレ(Châtelet)と RER(鉄道)のシャトレ・レアール(Gare de Châtelet - Les Halles)との間には二駅をつなぐフランス国内でいちばん長いとされる動く歩道が設置されている。パリのど真ん中にあって五本のメトロ線と三本のRER線が交錯する巨大な地下駅である。
できればここでは乗り換えたくない。何度も通ったことがあるが、ラッシュ時にどんな様子なのかは知らなかった。Dailymotion にその不思議な情景がアップされている。
http://www.dailymotion.com/video/x5z57a_tapis-roulant-a-chatelet_news
本の隣のマン・レイの絵葉書は写真を撮ろうとしていて偶然現われた。「肖像」1925。薔薇色なので並べてみた。下は山下陽子さんの挿絵の一点。
シュルレアリスム、エロティシズム、デカダンスの文藝出版
エディション・イレーヌ
http://www.h4.dion.ne.jp/~irene/