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新語新知識付常識辞典

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『新語新知識付常識辞典』(大日本雄弁会講談社、一九三四年一月一日)キング新年号別冊付録。質問・回答形式で新しい言葉を説明している辞典。某氏よりお借りしているが、これは読んで飽きない。面白い。

「野球の球の性質を教へて下さい」ではイン・カーヴ、アウト・カーヴ、イン・ドロ、アウ・ドロ、イン・シユート、アウト・シユート、イン・コーナー、アウト・コーナーの説明がしてある。インとアウトは打者に近い方と遠い方という意味。カーヴ、ドロップ、シュートの意味するところも現在とやや異なっているようにも思う。球種の細かいことには詳しくないけれどもシュートとあるのが今のスライダーのようだ。

「最近美術界に於ける左の主義の意味を教へて下さい」では立体派(俗に三角派ともいふ)、印象派、後期印象派、シュール・レアリズムの説明が答えとして出ている。シュール・レアリズムは以下のように定義されている。

《現実的な意識から離れて人間の感情や夢想などを画面に示すことを主張した一派で、世界大戦後のフランスに起つた画派です。これにはフロイドの精神分析学の理論が影響してゐますが、画面といふものは現実をうつすことに限らないといふ点で、勝手な表現をするから、これも一見何が何かわからぬ。》《ミロー、タンギー、ピカソ等が現在この派の作家。》

あれ? ピカソはシュルレアリストだったのかな。ごく広い意味で言えばそうかもしれないが。

新語新知識付常識辞典_b0081843_20125399.jpg

「レストラン、バー、カフエー、ミルクホール、喫茶店はどう違ひますか」の回答は全文引用しておく。(改行のところ一行アキとした)

《【答】 レストランとは特に欧米風の食事をさす料理店を云ひます。定食の外に二三品といふ軽便な食事もつくり、食事中に必要な酒類其他の飲料も備へて客の註文に応じます。

 バーは酒場のことです。各国の各種の酒類を網羅し、酒本位の客の満足する様、設備してあります。つまみ[三文字傍点]と称へる小菜以外その店では食事の用意をせず、レストランに比し、小規模で、経費も少く、随つて売価も幾分低廉です。

 カフエーは珈琲店です。良いコーヒーを安価に飲ませるのが主眼ですが、ビール、リキユール等の飲物や、パン、サンドウヰツチ程度の極く軽い食物位は用意してゐる訳です。我国現在のカフエーは、本当にコーヒーのみを飲ませて呼物にしてゐる店もありますが、大体レストランでもあり、バーでもあり、カフエーでもあり、殆ど此等三種を混同した特種の営業をしてゐるものが多く、何も美人のサービスを切離しては考へられぬ様な有様です。又、サロンと云ふのは我国の現状では美人揃ひの大きな構へをもつた所謂高級なカフエーを指します。

 ミルクホール、これは牛乳を飲ます店です。多く牛乳屋が兼業して居り、ミルク、トースト位を売うつてゐます。多く学生や小サラリーマンなどがお客で、官報や新聞などを供[ママ]へて奉仕をしてゐます。併し食堂や喫茶店などが盛になつた今日では、ミルク専門のかうした店は段々数少くなつて来ました。

 喫茶店、これは主として紅茶とか菓子とかを販売する店です。紅茶の外コーヒー、ソーダ水、アイスクリーム、各種の和洋菓子などを備へて、婦人子供等を常客とするのが普通ですが、今では手軽な食事なども出来、中には酒精含有の飲料も売る店もあつて、欧米の喫茶店に比し、余程風変りの形をしてゐます。》

新語新知識付常識辞典_b0081843_2013823.jpg

こちらは架蔵のキング新年号付録。ただし戦後版である。『新語大辞典付世界時局人名録』(一九五一年)。作りとしては簡略化されていて戦前版の凝った感じはまったくない。シュルレアリスムはここでも新語として出ている。

《シュール・レアリスム(sur-réalisme 仏)「超現実主義」の意。主観的で、幻想的な、独特な芸術傾向。文学上にも使われるが、もともと絵画の一方向で、ピカビア、キリコなどがこの派に属する。フランス映画「美女と野獣」、イギリス映画「赤い靴」のバレーの場面などはこの傾向のもの。略してシュールともいう。》

《もともと絵画の一方向》でいいのか? もともとは詩人たちが始めた文学運動ではなかったろうか。グループの主導権を握ったアンドレ・ブルトンの美術好きから美術に偏重したようにみなされるのかもしれない。なおブルトンは音楽に興味を持たなかったため、当時は音楽のシュルレアリスムは存在しなかったようだ。
by sumus_co | 2012-10-29 21:31 | 喫茶店の時代
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