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もろもろ拝受多謝

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『菱』179(詩誌「菱」の会、二〇一二年一〇月一日)届く。手皮小四郎さんの連載「モダニズム詩人荘原照子聞書」は「もうすぐあなたは殺されるーー自昭和十六年秋、至二十年秋」というショッキングな見出しで太平洋戦争中の荘原の横浜から松江への疎開を検証している。人の記憶はあいまいで自分勝手だから回想というのはどこを信じてどこを信じないか、そのあたりが難しい。援用できる資料的な裏付けがあれば問題ないのだが、それも個人的な話となると、語り手を信じるしかないというところに落ち着く。手皮さんは冷静に取り扱いながら、朝鮮人やドイツ人神父の逸話を交えて時代相を肉付けしておられる。上は届いたばかりの『石神井書林古書目録88』より、荘原照子『マルスの薔薇』(昭森社、一九三六年)。

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『ロッジア』12号を頂戴した。《半島へ》という視点で文学における境界について考察および実作しておられる。ロッジア(Loggia)という誌名そのものが内側でもなく外側でもない場所を指し示している…というのはうかつにもまったく気づかなかった。ベンヤミン『ベルリンの幼年時代』の一篇「歩廊」(ロッジア)から取られたのだという。パリにもロッジアと呼んでいい回廊(パッサージュとは別もの)がある。例えば有名なのはパレ・ロワイヤル。その回廊はギャルリーと呼ばれている。ギャルリーはイタリア語ではガレリアである(すなわち画廊の語源)。またモランディを訪ねたボローニャでは街中いたるところに回廊が発達していた。雨にぬれずに往来できる仕組みになっている。それはポルティコと呼ばれている。これまで「ロッジア」はなんとなくロゴス(logos ラテン語で「ことば」)とかロジカ(logica 論法)と関連があるのかなあとぼんやりと考えていたのだが、まったく関係ないわけだ。フランス語でも建築用語としてロジア(loggia)、ポルティク(portique)、ギャルリー(galerie)、ペリスティル(péristyle)などの類似した概念がある。厳密にはビミョーに異なるようだが、ようするに回廊、柱廊である。ロッジアはもともとはルネサンス時代に考案された建物のファッサード(正面)につくられたスペースでギリシャ建築のストア(stoa)に類するものだった。ストア(ゼノンがアテナイの彩色柱廊で教授していた)からストア派が生まれたようにロッジアからロッジア的思考が生まれる。


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金澤一志『方三寸』(JAGON BOOOKS、二〇一二年一〇月)。『みみずばれプロセス』『聖マチコ伝』につづくシリーズ。《ふたをわすれるとことばがあふれて雲になってゆく》…なんと贅沢な言葉の器であろうか。


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小沢信男さんの『東京骨灰紀行』がちくま文庫になった。文庫版あとがき「三年過ぎれば」から読む。小沢節健在。お元気そうで何よりのこと。文庫になるまでの三年間に東京はかなり変ったかと思いきや《まぁ、おおかたは小異にして大同か。便利な携帯になりましたので、どうぞポケットにねじこんでご活用ください》とか。それでもこのあとがきは補足をいくつか数えている。

なかではやはり伝馬町牢屋敷が気になるのだ。旧十思小学校校庭に五階建てのビルが建つことになった。そのため今年「伝馬町牢屋敷跡遺跡見学会」があったという。牢屋敷のまんなかに丸井戸そして神田上水の樋(水道設備)が何本も縦横に走っていたそうだ。

《牢の土間に風呂桶を据えて、夏場は月に六、七回、冬場で三回は入浴させた、という記録もある。井戸は何本もあったにせよ、この丸井戸から汲みあげた水を、鼠小僧も浴びたのか。》

と書いておいて、こう締めくくる。ニクイ。

《この遺跡調査は十月に終わる。あとは掘っくりかえして地上五階地下一階のビル工事がはじまる。建築主は中央区長。用途は、小規模特別養護老人ホーム、公衆浴場、体育館の複合施設。そうか、街場のお風呂屋さん激減のおりから、ここに区営の風呂屋ができるのだな。ここで入浴できるとは、牢屋敷このかたの功徳であります。》

『東京骨灰紀行』(筑摩書房、二〇〇九年)
http://sumus.exblog.jp/11886917/
by sumus_co | 2012-10-20 21:35 | おすすめ本棚
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